誰かに聞いた怖い話
・・・ミーコ10
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その時、斎場の職員と覚しき男が、そろそろ時間だと葬儀の参列者に話している声が、斎場の庭を物寂しげに吹く風に乗り聞こえて来て、俺達は建物へと向かって歩み出したのだった

ミーコの話は途中迄だったけれども、きっと後で彼奴が話してくれるだろう…もしかしたら、今晩にでも…

俺の前を、肩を落とし歩くミーコの父親と彼奴の後ろ姿を見つめながら、俺は何故か話しがそれだけでは済まない様な…そんな気がしていたんだ





『そんな事があったのかね、あの娘らしい勘違いだ…なぁ、母さんも、そう思うだろう』

無理矢理笑顔を作ろうとしているのだろう…

ミーコの父親は、悲しみを無理矢理胸の奥に仕舞い込もうと、ミーコの母親に絶えず冗談を飛ばし、それにつられてミーコの母親が、その一瞬だけは娘を失った悲しみを忘れたかの様な、そんな微かな微笑みを浮かべているのを見る瞬間が…俺には一番辛かった



『…君に頼みがあるんだ』

一瞬の静寂を突いて、ミーコの父親が彼奴に向かって話し掛けたんだ



『何ですか?俺に出来る事なら、何でも言って下さい』



『娘の事は…忘れてくれないか、あの娘の事は早く忘れて…誰か良い人と幸せになってくれ』

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