誰かに聞いた怖い話
54話…ミーコ8
.
『見たって…何を?』



『お姉ちゃんの周りを夜事うろつく猫よ…私、見たの』



『それって…近所のね…』

『違うわよ!そんなんじゃ!お姉ちゃんの着る筈だったウェディングドレスに、口から真っ赤な血を滴らせた猫が、変な風に捻れ曲がった身体を摺り寄せていたのを、私は見たのよ!』

『普通の猫が、壁をすり抜けて入って来る?』

『そこら辺に居る普通の猫が、お姉ちゃんの……お…お姉ちゃんの喉をどうして喰い千切るの…』



『!』

そう云って、又、泣き出した彼女に…俺は声を掛けられ無かった





『お姉ちゃんは、事故で亡くなった事になってるの…でもね、お姉ちゃんの喉には酷い傷跡があったの…警察の話では、事故の直後に何かの動物が喰い荒らしたんだろうって…でもね、私には分かったの…お姉ちゃんを殺した犯人が…』



『…』



『犯人は、きっとあいつよ』

『お姉ちゃんが誤って轢いてしまったって云う、その猫なのよ!そいつの復讐なのよ』

そう興奮して喋るミーコは、いつものミーコではなかったんだ

今にして思えば、その時既に、ミーコの運命は定まっていたのかも知れない



『話し中…ちょっと良いかね』

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