誰かに聞いた怖い話
・・・深夜の客11
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出来心でした…
それは男の心の中に芽生えた、ほんの小さな出来心だったのです
もっとも男のその感情が、どんなに身勝手で醜いモノなのか…弁明の余地は無いでしょう
男はその春女房と離婚をして、多額の慰謝料を請求された挙げ句、長年勤めた会社を解雇され…生活の為に仕方無く此の業界に身を沈めていたのです
けれども、その事は同僚達には内緒の話でした
彼は誰にも、弱みを見せたくは無かったのです
その心の葛藤が、そのタクシー運転手を変えて行ったのでした
そして彼は、とうとうその日に…
けれども彼は裁かれませんでした
彼が有罪になる事は…無かったのです
彼はその事件を起こす僅か数ヶ月前から、人には見れないモノを見て、人には話せないモノと話す生活を続けて…医者の治療を受けていたのです
そして彼は無罪になりました
『でも…酷いよな、その運転手に殺された犠牲者は、死んでも死に切れないよな』
そう沈みがちな声音でしみじみと呟いたのは、病院長の息子でした
『それでそいつは…何処かに引っ越したのか?』
『ん…うん、何でも隣りの県の観光地で、誰かが見掛けたって』
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