誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて11
.
『あはははは…でも、此処からの眺めは最高じゃないかよ…流石に見晴らしは良いな、本当に最高だ』

家から持ち出したバットを、まるで邪魔者の様にゴリゴリと床の上で引き摺りながら、例の彼は笑い出しました

そう…彼にとっては、自分を子供扱いして侮る兄貴達のチームが、怖れおののき逃げ帰った此のビルの最上階に、こうして今立てた事が何よりも嬉しかったのです



けれども、それは違ったのです…彼の兄達が此所で何かを目撃し二度と此所を訪れ様としないのは、私達がこうして見ている景色ではなく、真っ暗な海に浮かぶ烏賊釣りの漁船の漁り火が瞬く夜だったのです

星々の瞬きをかき消す、明るく大きな満月の浮かぶ夜空だったのです



そして西の空はうっすらと黄色味を帯始め、明日の晴天を保証するかの様な夕焼け空を、その空に浮かぶ雲々の下半分に映し始めていたのでした



そう…もう直ぐ此所にも、夜が訪れるのです





『でもさぁ…何か揺れてないか?此のビル…』



『そうねぇ…揺れてるよ!』



『…』

私は此の時、ふと嫌な想像をしてしまったのです

私の脳裏に浮かんだその光景は、此のビルが急に崩れて私達はあの広い窓から…

[前頁へ][次頁へ]

36/96ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!