誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ5
.
『それで…何?質問は…』



『君ねぇ…やっぱり聞いて無かったんだ』

病院長の息子は少し呆れた表情をその顔に浮かべましたが、諦めた様にもう一度同じ質問を繰り返したのでした



『だからさ…結婚するとしたら、君はどんな男性とするつもりなんだい?』



『けっ、結婚!何を馬鹿な事を言ってるんだよ!おっ、男の俺が、何で男と結婚するんだよ』

私は彼の質問に狼狽し、思わず声を荒げていたのです



『はぁ…やっぱり人の話を全然聞いて無かったんだ…だから、最初にきちんと言ったろ…もし君が女性だったらって!』



『…済まない』

私はその時、自分の勘違いに漸く気付いたのです

多分、恥ずかしさの余り赤面しているであろう私の顔を見つめ、彼は更に尋ねたのでした



『…で、どんなタイプなんだい?』

そう尋ねた時の彼の顔は、いつに無く真剣な表情でした



『それは……』

だから私は、敢えて社交辞令的な返事をしたのです

そして私の答えに、一瞬面食らった様な表情を浮かべた彼は、私から目を逸らし何やらぶつぶつと呟いていましたが、その言葉の殆どが私の耳に達する事はありませんでした

嘘つきと言う単語以外は…

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