誰かに聞いた怖い話
・・・三毛猫9
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『だから彼は、彼奴の仕業だと…いとおしい息子を死なせたのは、あの三毛猫だと思ってしまったんだ』
『彼がそう思ったのには、無理からぬ事情もあったんだよ』
『無理からぬ事情…ですか?』
『証拠固めの聞き込みの時に、昔からこの一帯に住んで居る古老に話を聞いたんだが、少し記憶があやふやで最初の内は、中々その当時の話を思い出してはくれなかった』
『…』
『この地方では昔から猫は祟ると云われていて、苛めたりすると必ず仕返に現れる…そう云われていたそうなんだよ、勿論いつの間にかそんな話は、聞かれ無くなっていったそうだが…』
『兎に角、彼はそう信じて疑わなかった、息子が死んで悔やんでも悔やみきれない彼は、赤児の様子を良く見て居なかった…と、妻に事ある事に辛く当たったらしく…やがて妻は娘を連れて実家に戻り、そのまま二度と帰って来る事は無かったそうだ』
『それからだそうだよ、男が変わっていったのは…』
『そうですか、それでその後は?』
『一時期男は近所付き合いも止め、昼間は殆んど辺りを出歩かなくなったそうだ』
『たまに外に出ても、道で出会った人々に口すら利かず…何処かおかしかった』
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