誰かに聞いた怖い話
・・・白い乗用車7
.
『流石にこれにはその男もビックリして、気絶してしまったらしいんだが…』
『その男の遠くなる意識の中で残った記憶はこうだった………』
『その男とミラー越しに視線を合わせた若い女の子は、ジッと男の瞳を覗き込むとその男の耳元に、甘い吐息と共に微かに聞こえるくらいの小さな声で…そっとこう囁いたそうだ……』
『おじさん……ありがとう…』
『その男の薄れゆく視線の先に映っていたのは、車のドアも開けずに既に玄関の前に立っている女の子の姿だったと云う…』
『…そうして男はそのまま気絶してしまったそうだが、直ぐに弔問客によって見つかったらしい。』
『その弔問客の話だと、車で誰かが来たのは、静かな田舎と云うこともありわかっていたのだが……玄関が開いた音がして、誰かが入って来たような気配が感じられたのに…いつまで経っても誰も入って来ないので表に出てみたら、車の中で気絶している男を発見したそうだ』
『車から弔問客達によって通夜の家に運ばれた男は、別段異常は無かったそうだが…』
『目を覚ました男の話を聞いた弔問客達からは、遺体を安置しているこの部屋にも確かに良い香りが漂って来たと言う者が多かった…』
[前頁へ][次頁へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!