誰かに聞いた怖い話
・・・古都18
.
『………い、どうした?おい』

彼から渡された写真を見ながら、僕の顔付きは大分変わっていたのだろう…

その写真に注意が向いていた僕は、彼が心配して話し掛けているのに、全然気付いていなかった



『うん?ああ…ごめん、来週……』

『来週、もう一度行って来るよ』



『ん…何処へだ?』



『確かめて来る…』

(僕は、もう一度行かなければならない…あの土地へ…)

(僕は、調べなければならない…自分の素性を…)





『どうして、一緒に付いて来たんだ』



『まぁ…気まぐれ…かな』



『…』

次の週末、紫陽花の咲き誇る中をゆっくりと進む電車に揺られて、僕は再び古都へと向かっていた

その日は、梅雨独特のじめじめとした空気が、閉め切られた冷房の無い車内に立ち込め、むっとする空気を小さな扇風機が懸命にかくはんしていたんだ

そして、ただぼんやりと車窓を流れる景色を眺めていた僕は、薄い水色のTシャツの背中に、大小様々なブルーの水玉模様を染め抜かれていたのに、全く気付いてはいなかった



『聞いてくれるか…』



『何をだ?』



『写真…』



『あぁ、お前が話したければな』

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あきゅろす。
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