誰かに聞いた怖い話
・・・身近な恐怖(壱)6
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薄暗い玄関には、革靴が乱雑に脱ぎ捨てられていて、医者と言う職業からはやけに不自然な印象を受けたのを覚えています
そして管理人さんが、その部屋の住人の名前を呼びながら玄関から近い部屋のドアを開けると、その部屋の電気は消えていて、窓に掛った分厚いカーテンらしき物のせいで薄暗い室内には、何とも形容し難い悪臭とも云える臭いが漂っていました
『これは酷い…この臭いは、いったい』
管理人さんはそう言うと、手探りで部屋の照明のスィッチを探して入れようとしました…
カチッ…
パッ!
真っ暗な部屋の中を直ぐに照らし出した明かりに、私達は一瞬視力を奪われましたが…回復する視力の中に、リビングのソファーに私達に背を向ける様に座っているこの部屋の住人を見付け、はっ…としました
私が管理人さんを見ると、管理人さんも私同様に驚いた様子でしたが、先生と声を掛けながら前に回り込もうとして立ちすくみました
私が管理人さんに続いて、その部屋の住人に近付いた時です
管理人さんの口から、まるで空気の漏れる様な、ひぃとも、ひぇとも聞こえる声が私の耳に届きました
そして管理人さんは、その場にへなへなと座り込んだのでした
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