誰かに聞いた怖い話
・・・届かぬ思い2
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焚き火の傍らに座って居るのは、いつもの自信に満ち溢れた彼の姿では無く、炎の揺らめきに照らし出された影の様に、ゆらゆらと形の定まらぬ姿だったのです

その様子を別のモノに例えるならば、それはまるで真夏の熱せられた道路上に現れる逃げ水か、海上遥か彼方に現れる蜃気楼の様なモノ…

きっとそれは燃え盛る熱い炎の悪戯なんだと、私は自分の心に言い聞かせ彼が再び話し始めるのを待ったのでした



『俺には分かったんだ…』

けれども彼は、たった一言そう呟くと、それっきり黙り込んでしまったのでした



『だって…だって、別れたっきり、彼女とは逢って無いんだろう?』

『彼女だって、今頃君の事を想って…』

私はその後、言葉を続ける事が出来なかった



…私以外の皆は、どうして黙っているのだろう?



…友達が苦しむ姿を、どうして黙って見ているんだろう…



…それとも、私の方が変なのか…



私の頭の中は色々な自問自答で混乱し、己の考えを纏めるのには暫しの時を必要としたのです



もっともそれは答えの決して出ない、自分自身への問い掛けだったのです…



何故なら私は、彼では無いからです

彼には成り得ないからでした

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