[携帯モード] [URL送信]

勇者ものがたり
精霊王を殴るために物理の力を上げるべきか





「はあ。」




目が覚めた。


寝れない。








それもこれも





『大変だよユシア…どうしよう。』

というとてつもなく真面目な顔をしたトウマの言葉から始まり。

『どうした』

『考えたら、僕、ばあちゃんがいなくなってから誰かとこうして一緒に枕並べるのって初めてだ。なんだか不思議な感じがするんだね。
それに・・・ユシア、気付いたんだけどもしかしてこれって、昔本で読んだあの友達同士がやったりするっていう・・・』

『お、おう…?』

『ど、どうしよう、何だか 全 然 寝 れ な い』

『…えっと、そうか、うん。ま、まあ分かった。でも明日は早起きだしな、さっさと寝た方がいいぞ』

『う、うん、そうだよね頑張るよ。』

『……。』
『……。』
『ユシアはさ』
『おい』












というやりとりがあった(うえになんだかんだ話し込んだ)にも関わらず
今度は俺の目が冴えてしまい寝れない


おまけに最初に寝れないとか言ってた当の本人は気持ち良さげにぐっすり寝ているだと…?

おのれトウマ






仕方ない。

外の空気でも吸ってくるか。
















「んん」

扉を開け軽く伸びをすると、夜の冷えた空気が頬を撫で少し気持ちが良い。

とくに目的があるわけではないが、俺は適当に村の中心へと歩き出す。


もともと灯りの少ない道は月明かりに照らされて仄かに明るい。
ああ今日は満月なのか。
これなら精霊の力を借りる必要もなさそうだ。


当たり前だけど、この時間に起きている人間はいない。



静かな夜、村の細い夜道を歩く俺に精霊の光がほわほわとついて来る。



そういや村の真ん中は開けた広場があったはずだと思い出して、俺はそこに足を向けることにした。



「……。」


友達、ね。

確かに、良く考えたら人とここまで深く関わるのは初めてかもしれない。



1000年前、あの頃の俺は、人々にとってあくまで「勇者」だった。

だから「ユシア」という名だって、そもそも必要ないから呼ばれたことは一度も無い。

ん?いや待てよ?ちょっと呼んでみろよって言った時に「ゆしゃ」とか「ゆうしゃ」みたいな発音ならあったか?なんなのあいつら何であんな訛ってたの呪われてんの?


ま、まあそれは置いといて

俺自身も人間との間に友情だとか仲間とか、そういった関係など考えたこともなかったしな。
そもそもそう言った事を口にする奴はどいつもこいつも下心ある者ばかり。



「友達…。」

そういう意味では俺も初めてなのか。

そうか。





まあ人間や亜人を除けば、信頼できる存在は何人(匹?)かはいたけど


もうさすがに生きてはいないだろうな。


……。



やべえしんみりしてきた。



「精霊、聞きたいことがあるんだが」

俺がそう問えば、ふわりと穏やかな光が当たりを漂う。

『なぁに』
『ゆしあ』


「いや、その……。一応確認なんだが、精霊の森は、まだ…あるよな…?」


『うん』
『あるのー』
『ずっとね』
『むこー』



「そうだよな。」

精霊の森がなくなるとは思えないが、つい気になって確認してしまった。
けれど精霊たちの答えに一抹の不安も消える。




『でも』

『あのね』


「?」

『ぱぱ』

『ねてる』

『だいせーれ』

『おきないの』


「は…?」

“ぱぱ”
それは精霊王の事だ。


寝てる…?仕事をサボってるって事か?

いやでも大精霊達も起きないって

『あのね』

『ゆしあ』

『いなくなた』

『ぱぱ』

『おこる』

『だから』

『にんげん』

『きらい』

『だから』

『ぱぱ』

『ねむたの』




「はぁあ!?」




[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!