勇者ものがたり
遥か昔の空白
「…っ」
思わず声を出してしまい慌てて口を閉ざす。
まあ、
創世期じゃあるまいし、今のこの世界では、あのおっさんは精霊の根源として存在しつつ世界を維持させることが一番の仕事なわけで
あのおっさんが眠った程度、さほど問題はない。
むしろ問題だったらこの世界はとっくの昔に生物一つ存在できない死の世界になっているのだが
それにしても
いくらなんでも1000年はやりすぎだろう。
起きないのか、起きれないのか。
これがもしおっさんが故意でやってる事ならとても俺の存在の有無だけが原因とは思えないけど…
精霊も神も寿命が無いせいか、あいつらどうにも時間の感覚に疎いところがあるしな。1000年経ってる事に気付いてない可能性もあるんだよな…。
どちらにしろおっさん(精霊王)への再会の挨拶は拳で十分なようだ。うん
問題は大精霊の方か…。
たとえおっさんが眠りについても大精霊がいる限りこの世界は最低限の環境を保つことは出来る。
だがその力とて精霊王とは違い無限ではないし
精霊の根源とも言える存在が眠りにつくと精霊たち全ての力までも弱まってしまう。
精霊は大精霊達も起きないと言った。
と、するとだ。
確実に、精霊達は減っていってるはず。
おまけに大精霊がいなければ精霊に偏りが生まれるし、
地獄のような熱で誰も踏み込めない土地
常に嵐が覆う土地
一年中雨が降り続ける土地
光一つ通さない土地
本来なら育つべき植物が枯れ、精霊の加護も無い世界。
生き物も死にやすくなるだろう
あげく子供も生まれにくくなる。
そんなアホみたいな世界になりかねん…。ていうか、もうなってるのか?
春の国とか、夏の国とか、どれも季節の名前だしな…
けど
冬の国だったか?
たしか3代目の勇者の異世界召喚とやらの話で出てたが、その頃からその名称で国があったということだろうか。
それだと少なくとも700年前から精霊に偏りが生まれてる事になる…。大精霊達が700年前から眠りについてるってことか?それともはじめから精霊の管理が放棄されていたのか
ああもうめんどくさい。いいや精霊王を叩き起こせば万事解決だろう。本当に何も他に原因が無ければだけれど
ほんと…
どうせ俺も、いつかはおっさんを置いて先に死ぬと分かっていただろう
「相変わらず馬鹿だよな…」
それも馬鹿の前に親がつくほうの
[*前へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!