5000hit記念小説
それでも嬉しい日‐2
切り替えなきゃ。と思っても、一度陥ったら、なかなか切り替えるのが大変で。
街から出て叫んでから数時間、買い出ししながらフラフラしてた。
――で、ようやく?宿屋に戻って来たんだけど。
「カナ!おかえり!!」
「あんた何してんの、返ってくるの遅いわよ!食事冷えちゃうじゃない!」
宿屋の扉を開けた瞬間、カロルとリタの声が耳に響く。
あれ、宿屋の部屋じゃないよね?
宿屋の扉開けたよね?
思わず後ろを振り向いてみるけど、私の後ろにはさっきまで歩いていた街並みが見える。
「……カロル、リタ。さすがに宿屋のロビーで大声は駄目だよ」
「あんただけには言われたくないわよ!」
二人の方を向いて言ったら、リタにつっこまれた。
いつもならまだしも、今はへこむよ、リタ…。
「……」
普段のように返さず静かにしてると、「と、とにかく行くわよ!皆、あんたを待ってたんだから!」って言いながら、私の腕を掴んで部屋まで歩いてく。
そして、ユーリやカロル、おっさん、ラピードの泊まる部屋の前まで来ると、ノックもなしでリタは扉を開いた。
しかも私を部屋の中に押し込む。
「おわっ」
「この子、ようやく帰ってきたわ。さっさと始めましょ!」
「あら、なかなかの登場の仕方ね」
なんとかこけずに踏ん張っていると、リタとジュディスの声が聞こえた。
視線はまだ足元だけど、エステルの可愛い靴も見える。
あれ?みんないるの?
そう思って顔をあげようとしたら
「カナ、おかえりなさい!」
エステルの声と同時にパーンと破裂音。
慌てて顔をあげたら、クラッカーを持ったエステルが笑顔で立ってた。
「……へ?」
エステルの後ろには、ジュディスやおっさんが立ってる。
ユーリはベッドに腰掛けてるけど、こっち見てなんか笑ってて、ラピードがテーブルの近くで座ってこっちを見てた。
テーブルには、ケーキとか晩御飯(だと思う)があって……
「ん?ケーキ?」
なんでケーキ?
そう思いながら、エステルを見れば、申し訳なさそうな顔をした後で頭を下げられた。
「ごめんなさい、カナ!」
「へ?は!?」
なんで私、エステルに謝られるの!?
「最近、カナに元気がない気がして…。それで気になって、今日は後をつけていたんです!そうしたら、『くりすます』とか『ケーキ』とか聞こえたので、何かの私たちの知らないお祝い事でもあるのかと思って、元気になってほしくて、準備してみたのですけど……」
「えっと、つまり」
嬉しさなのか、何なのか、よくわかんないけど頭のなかでグルグル駆け巡って、上手く言葉にならない。
「おまえのために、みんなで準備したんだと。なんで落ち込んでんのか知らねえけど、これで少しは元気になれよな」
ユーリが立ちあがって、私の頭をポンポンと叩く。
普段のチョップと違って優しいんですけど。
「私は元気だって!でもありがと!さぁ、食べよー!!」
みんなクリスマスを知らないけど、それでも私を気遣ってくれてのパーティーをしてくれた。
クリスマスとは違うかもだけど、こんなに嬉しい日はないよね!!
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