変態共と苦労の多い大空
え? 付き合ってるだろ?(は? 何言ってんの?)/大空と雨
今日は、日曜。
学校もなく、補習もない。
ついでに言えば、リボーンもどこかに朝から出掛けていて、平和な日だ!
さぁて、何をしてダラダラと過ごそうか、ウキウキしながら考えてると……
「ちわーっす!!」
という、元気な声が外から聞こえてきた。
それと同時に、玄関を開ける音と母さんの「あら、いらっしゃい」という声が聞こえてくる。
「山本…?」
今日、何か約束してたっけ?
とか思いつつ、取りあえず1階へ降りる。
玄関では、山本と母さんがニコニコしながら会話をしていた。
山本は、俺と目が合うと「よっ」と、眩しいくらいの笑顔で挨拶した。
母さんは、それで俺が来た事が分かり、
「じゃあ、山本君。ゆっくりしてね」
そう言って、台所に消えていった。
それに山本が、短く「はい」とだけ、返事するのを待ってから俺は山本に話しかける。
「取りあえず、山本。部屋に上がってよ」
「おう」
ニッコリ笑って返事をする山本を見て、元気だなぁ、と思いつつ自分の部屋に山本と向かった。
部屋に入ってから、ふいに気になって、突然の訪問の理由を聞いてみると――
「え? ツナに会いたくなって会いに来ただけだけど?」
と、当然だろ。何言ってんだ?と言外に目で言う山本がいた。
そういう事は、彼女か女の子に言えばいいのに……。
それからは、何事もなく(いつもだったら、獄寺君とか骸が乱入してくる)二人で話したり、マンガを読んだりと3時間ダラダラ過ごしていたが、今は対戦ゲームの真っ最中だ。
今両手は、コントローラーを握っていて手が離せない。
それに、俺は山本にバレないように安堵の息をついた。
今日は、山本の(セクハラ紛いな)スキンシップが、いつも以上にしつこかったのだ。
母さんが出掛けると言ってからは、更にしつこかった……。
最初は、ただ肩や手に触れる程度だったのだ。
でも、さすがに内股をナチュラルに触られた時は、まいった。
背筋に悪寒が走った程だ…。
思わず殴りそうになったのをグッと堪えて、ゲームをしようと持ち掛けたのが、今から30分前だ。
溜息を小さく吐いて、チラリと横に居る山本を見る。
山本は画面を真剣な顔で見て、ゲームに集中しているようだった。
俺もさっきの事なんか気にせず、ゲームに集中しようと再び画面に目を戻す。
暫く、二人でピコピコゲームをしてると、急に山本が話しかけてきた。
「…なぁ、ツナ」
「んー?」
もちろん俺は、ゲームに夢中で生返事を返してしまう。
「俺達さぁ、もうそろそろ次行っても良くねぇか?」
「何がー?」
山本も見ずに、ゲームに集中する。
「何が?って…」
山本は、コントローラーを操作する手を止めて、俺の方を向いた。
「山本、どうしたの?」
その行動に、チラリと視線だけを山本に向ける。
「だから、そろそろ恋人らしい事しようって事なんだけど?」
その言葉に、俺の手からコントローラーが滑り落ちた。
「……は?」
俺から出た言葉は、何ともマヌケな言葉だった。
「いや、は?って言われても…」
そんな俺を見て、山本は怪訝そうな顔をする。
え?
ちょっと、待って。
それは、今俺がすべき表情なんじゃないすかね? 山本さん。
フリーズしちゃってる俺に何を思ったのか、山本は急接近してきた。
気付いたら、目の前には山本の精悍な顔。
腰には、大きな手。
山本、やっぱカッコいいなぁ。
スポーツ出来るし、明るい性格だし……。
だから、女の子にモテんだろうなぁ。
なんて、最初は呑気に頭の中で思う。
でも、どんどん近づいてくる山本に、ハッと我に返って、現実逃避を止める。
「ちょっとちょっとっ?! 山本さん?」
「何だよ? 折角いいとこなのに…」
俺の制止の声に不満気にそういいながら、取りあえず止まる山本。
取りあえず、止まってくれてありがとう。
でも、いいところって何だ?
何をしようとした?
そして、どうしてそんな不満気なんだ?!
ツッコミたい所は、たくさんある。
でも、取りあえず……
「山本さん…」
「ん?」
「離れてくれませんかね?」
「えー、何でだよ?」
不服そうにするな!!
危険な感じがするんだよ!
超直感に頼らなくてもビシバシ感じるんだよ!!
「何でも!!」
強く言うと、案外素直に離れる体に安心する。
しかし、距離は今だ十分近い。
…てか、離れてくれた事に安心してる場合じゃない。
「…山本、一つ聞きたいんだけど」
一つ所か聞きたい事は、たくさんがあるが、一番大切な事を先に聞く。
「恋人らしい…って、誰と誰がですか?」
そう聞いた瞬間、山本はキョトンとした表情で即答えた。
「俺とツナだろ?」
「…えーっと、どこの『ツナ』さんでしょうか?」
何となくこういう答えが返ってくるとは分かってた。
分かってたけども、希望は捨てるな、俺!!
「ツナ、寝ぼけてんのか? お前しか居ないだろ?」
その一言で、俺の希望は簡単に絶たれた……。
「ちょっと、待て…。山本さん、いつ俺達は恋人同士になったのか聞きたいんだけど?」
「え? 付き合ってるだろ? 前世から」
「は? 何言ってんの?」
即答かよ…。
というか、山本も電波だったか。
「あー、山本? 疲れてるだろう? 野球の練習、頑張り過ぎたんだろ? ほら、ベッド貸すから、寝なよ」
そして、正気に戻れ!!
頼むから…!!
「疲れてねぇよ。あ、でもベッドは借りるな」
山本は、ニカッと笑って立ち上がる。
それと同時に俺も上に引っ張られた。
そして、そのままベッドの方へ引っ張られそうになるが、意地で動かない。
「待て待て待てっ!! 何する気だ?!」
「ナニって……ツナ、分かんねぇの?」
いや、何か予想つきますよ?!
だからこそだよ?!
というか、『なに』の変換違うだろ!?
俺が必死でその場に留まろうとしてるのに何を勘違いしたのか…
「ああ、そういうプレイ?」
はい?!
プレイって、おまっ!!
「いやいや、違うからっ!!」
あー、どうしようどうしようどうしよう!!!
あの変態みたく見えてきた…!
鳥肌立ってきた…。
殴ってもいいかな?
でも、コレ一応親友…。
「恥ずかしがんなよ。これから全部見んだから」
この一言で、殴るを躊躇してた俺の心は決まった。
どっちっかって…?
もちろん、殴る!!
そうと決まってからの俺の行動は早かった。
直ぐに掴まれてない方の腕で山本の鳩尾狙って力いっぱい殴る。
「グッ…」
小さな呻き声と共にその場に蹲る変t…山本。
俺は、素早くその変たi…山本から離れる。
「ツ、ナ…力、強いな」
誤算だったとでも言うように、少し悔しそうにする変t…山本。
ああ、もうめんどくさいな、これ。
もう素直に変態と呼ぼう。
俺は、意外と力がある。
まぁ、平たく言えばリボーンと変態共のおかげだ。
その変態共にたった今、仲間入りした山本はまだ苦しそうながらもゆっくりと立ち上がる。
チッ
利き手じゃないから、弱かったか…。
大体、あの変態共は、一発でノックアウトだ。
やたらしぶとい時があるが…。
「照れんなよ、過激だな。ツナ」
「どこら辺が照れてるの?」
「これがツンデレってヤツな」
「違うっての。大体、恋人になった覚えないし…」
「ははは。照れちゃってさ。ツナは可愛いな」
ダメだ。
話が通じない……。
「もう、いいや」
「どうしたんだ? もうこのプr…おっと」
最後まで言わせる前に、もう一発パンチを打ち込むが、さすが山本。
瞬発力が無駄にいい。
敵との戦いならまだしも、今じゃ全く嬉しくない。寧ろ当たれよ。
「ああ、こういうプレイな」
俺の闘志に気付いたかどうかは知らないけど、何かのスイッチが入ったらしい変態は応戦するつもりらしい。
取りあえず、部屋は壊したくないので、窓から飛び降りる。
それに山本も続く。
近所の空き地についた所で変態は一言。
「もしかして……野外がいいのか、ツナ?」
俺は、キョトンとしながら、そう言ったヤツの顔目がけて拳を振り上げた。
山本に拳を打ちながら、思う。
ああ、どうして俺の周りは……こうなのか。
この日は、変態共の所為で本気で悩み出した日だった。
-END
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