ねえ聞いて、叶わなかった夢の欠片。
夢を見た。
昔からいつも、よく見ていた夢。
真っ暗闇の中、僕は一人立ち尽くす。
そこは暗くて、寂しくて、でも怖くはない。
一歩、一歩、ゆっくりと歩き出す。足元の様子も分からずに歩き続ける。
いつもなら、だいたい少し歩けば行き止まりに辿り着いて目が覚める。
でも今日は、まだ先があった。
歩いて、歩いて、先を知りたくて歩いた。
だんだん、暖かくなってきていた。
途中、大きな穴があることに気づかす足を滑らせた。
真っ直ぐに墜ちる体。怖くなって目を瞑る。柔らかい衝撃に目をゆっくりと開けると、そこは見たこともない真っ白な世界。
暖かくて、心地良い世界
求めていたのかもしれない夢の続き
朝。
陽七は、真っ暗な視界の中で目を覚ました。
「………」
それは、昨日の出来事が夢ではなかったことを如実に語る。
徳勝が陽七を抱き締めたまま、小さく寝息を立てて眠っていた。
(起きるの早すぎたかな)
よほど強く抱かれているのか、ほとんど身動きが取れない状態で陽七は再び目を閉じた。
あの夢に、もう一度出会いたくて。
やっと見られた柔らかな続きを、もっと長く見ていたくて。
それが何を意味するかなど、知るには幼すぎた
ねえ聞いて、叶わなかった夢の欠片。
(君の続きはこんなにも暖かかったんだね)
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