病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かつとも。 もう一度目が覚めた時、陽七は布団の中で一人丸くなっていた。 「……あれ…」 あったはずの温もり。いたはずの人。陽七は動揺し、跳ね起きた。 「美月…さん、…」 「お早うございます。陽七さん」 襖を開けて現れた徳勝の姿に、陽七は安堵の溜め息を吐いた。 「どうしました?」 「…突然いなくなったから、驚いて…」 「ああ…すみません。朝餉の支度をしていましたので」 徳勝の手にしたお盆には、確かに湯気の立ち上る白飯や汁物があった。 「あ……ごめんなさい、何か手伝えば良かった」 「いえ、よくお休みになられていましたし…どうぞ」 置かれたお盆を見つめ、暫しぼうっとする陽七。その様子を不思議そうに眺めていた徳勝は、はっとして口を開いた。 「あ…何か、お嫌いなものがありましたか?」 「あ、いえ、違うんです!」 その言葉に、慌てて首を振った陽七はお盆の前に膝をついた。味噌の、懐かしい匂いがする。 「ただ…本当に、僕はここにいるんだ、って思って」 「……今までは、どちらにお住まいになっていたのですか?」 言葉に詰まった陽七の姿に、徳勝は聞いてはまずかったかと思い、すみません、と小さく零した。 「基本は野宿でした。たまに、安い宿に泊まったりしますが…」 野宿…、と呟く徳勝。いただきます、と手を合わせた陽七は、箸を手にしてから徳勝を見て言った。 「本当に、ずっと一緒にいてもいいんですか」 徳勝はさも可笑しそうに笑うと、しっかと頷いた。 「はい。ずっと」 病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かつとも。 (それは互いが互いを望む限り) [*前へ][次へ#] [戻る] |