なあ、お前にここにいて貰わないと、困るんだけど。
はじめは女性かと思った。
路地裏で倒れていたのを、糊を乾かす作業の途中に見つけた。
お酒でも飲み過ぎて、眠ってしまったのかと。
介抱しているうちに、男性だと分かった。
世の中には随分と女性的な人もいるものだと感心した。
接吻までされて何を暢気な、と我ながら思う。
でも相手が男色なら仕方がない。人の趣味嗜好に口を出すつもりもない。
それでも、
いつまでも纏わりつくこの熱は何なのだろう。
彼の言うところの“好き”とは違う気もする。
かといって好意を寄せた訳でもない。
でも、その熱を求めていたのは確か。
冷たい氷が、溶けるような
吉原はずれ 其の壱 完
[*前へ]
[戻る]
無料HPエムペ!