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「なに、ニンゲンが湖に来ていた…!?」

命辛々帰ってきたラフィの言葉に、驚きの声で返すクロウ。周りにいる虫達も動揺を隠せずにいた。

「はい…私は、ビルドが庇ってくれたお陰で助かりましたが……」

そこから、口を閉ざすラフィ。皆から同情の視線が注がれる。

「うん…ビルドなら、或いは無事に帰ってこられるかも知れない、が…」
「クロウさん、ニンゲンは既にこの辺りにまで来ているんでしょうか」

一匹がそう訊ねると、周囲は不安の声でがやがやと騒がしくなった。

「いや。まだ断定はできまい…だが、そろそろ移動も考えねばな」

クロウの言葉に、誰もが閉口する。
移動。即ちそれは、生まれ育った森を捨て新たな住処を見つけること。

「……しかし、ニンゲンとは言っても子供だけです。まだ」
「そう言って、二つ前の森で多くの仲間が命を失った」

この森の仲間達の中では最年長のクロウは、今までに幾度も住処を変えて生き延びてきた。つまり、幾度も移動せざるを得ない環境を経験してきたということ。
そのクロウの言葉がどれだけ正しいか、皆わかりすぎるほどわかっていた。

「……この山を北に進み、谷を一つ越えれば新たな森が見つかる。山奥にまで、ニンゲンが来ることはないだろう」



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