13
その声は、湖の向こう側の茂みから聞こえてきていた。
瞬間、石のように固まる三匹。
「あ!ちょうちょだ!」
「え、まじで!?」
「早く、網貸せって!」
茂みのざわめきが激しくなり、そこから二人の子供、つまり人間、が現れた。
初めに動いたのはラフィだった。
「嫌あああ!?」
子供の一人ががむしゃらに振り下ろした網から、間一髪で逃げ延びる。それでも尚追いかけてくる虫取り網。
「ラフィ!!」
それまでの躊躇いは何処へ、ビルドはラフィの元へ急降下すると、そのまま網を持つ子供の顔辺りへ飛び込んでいった。
「うわっ、何だこれ!?」
「カブトムシだ!すっげぇ!」
子供達の注意を引きつけるつもりらしく、暫く辺りを飛び回っていたビルドは少し離れた木の高いところにとまった。子供達は確かに、ビルドの方へと気を向け始めていた。
「ラフィ!今のうちに逃げるんだ!」
ビルドの言葉に、ラフィは急いで湖を離れた。
不安に任せて一度だけ振り返ると、ビルドが子供達を撒く為に別の木へ飛び移るところだった。
とにかく誰かに、このことを伝えなければ。
必死に飛び去っていくラフィには、そのすぐ傍らの地面で気を失っているタンナなど目にも入らなかった。
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