14 「なに、ニンゲンが湖に来ていた…!?」 命辛々帰ってきたラフィの言葉に、驚きの声で返すクロウ。周りにいる虫達も動揺を隠せずにいた。 「はい…私は、ビルドが庇ってくれたお陰で助かりましたが……」 そこから、口を閉ざすラフィ。皆から同情の視線が注がれる。 「うん…ビルドなら、或いは無事に帰ってこられるかも知れない、が…」 「クロウさん、ニンゲンは既にこの辺りにまで来ているんでしょうか」 一匹がそう訊ねると、周囲は不安の声でがやがやと騒がしくなった。 「いや。まだ断定はできまい…だが、そろそろ移動も考えねばな」 クロウの言葉に、誰もが閉口する。 移動。即ちそれは、生まれ育った森を捨て新たな住処を見つけること。 「……しかし、ニンゲンとは言っても子供だけです。まだ」 「そう言って、二つ前の森で多くの仲間が命を失った」 この森の仲間達の中では最年長のクロウは、今までに幾度も住処を変えて生き延びてきた。つまり、幾度も移動せざるを得ない環境を経験してきたということ。 そのクロウの言葉がどれだけ正しいか、皆わかりすぎるほどわかっていた。 「……この山を北に進み、谷を一つ越えれば新たな森が見つかる。山奥にまで、ニンゲンが来ることはないだろう」 [*前へ][次へ#] [戻る] |