卒業 6 「本気?」 「本気…じゃなかった?」 望は急に不安げに、聞いてきた。そんな望に俺は少し安心し、目の前で手を振り慌てて否定する。 「いや。本気なら良いんだ。おれ、また絶対、馬鹿な勘違いされると思ってた。」 まさか、そんな返事が返ってくるなんて思ってなくて、頭は妙に冷静だ。 「しないよ。馬鹿じゃないし。」 「馬鹿だよ。お前のせいで付き合えた途端、遠距離だ。…絶対浮気すんなよ。」 望を睨みつけて言うが、俺の方が身長が少し低い分、どうにも迫力がでない。 「しないよ。」 「いや。お前、押しに弱いんだから、俺みたいな奴に告白とかされたら、どうすんだよ。」 「いないって。そんな物好き。」 そう言うと、望は今度はへらへらではなく、吹き出して笑う。 「いるかもしれないだろ。」 「お前だけだよ。」 「っ?!……お前は、無自覚にそんな事言ったりするから、心配なんだよ。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |