あれから自分でもびっくりするくらい食べた。俺の周りには食べた後の残骸だけが残っている。
半年分となればこれくらいになるのは当たり前だが、見回してみればあり得ない量だ。
だいぶお腹が満たされてきたのを見かねたのか、少年が隣に腰を下ろした。
「だいぶお腹は満たされたか」
その問いに頷くと、少年はぱちんと指を鳴らした。周りの哀れな残骸は跡形もなく消えた。
「そろそろ、お前に伝えたいことを話したい」
天使の実についてや今後
それから、悪魔の実についてなど
そう、呟いた少年にまた、俺は頷いた。賭けに勝った以上、生きるしか道はない。
頭に過った考えは、きっと言い訳なのだろうと頭の隅では知っていた。そしてそれが意味するものを知りたくなくて、そっと気付かないフリをする。
「まず、天使の実についてだ。この前話した通り、悪魔の実に対抗するために出来たもの。対だと思ってくれて構わない」
静かに話始めた少年は至って真剣。
「そして、悪魔の実の弱点を相殺できる。海に入ることも。悪魔の実を何度食べても死ぬことはない」
……デンジャラス極まりないな。
それが、俺みたいに悪いやつの手に渡ったらどうするつもりだ?
現在進行形で渡ってるけど……
「そのため、天使の実は能力者を選ぶ」
「選ばれなかった奴は死ぬ、か」
「そうだ」
ため息混じりの言葉に、きっとたくさんの人が亡くなったのだろうと思わされた。
「その変わり、リスクもある。天使の実は一年に一度、食べなくてはいけない、どんなリスクか、分かるな?」
……俺の考えが間違ってなければかなりのリスクだと思うんですけど。
「その実を狙われる。お前は一生、追われる身だ」
や、やっぱり?
「このペンダントを渡しておく。このペンダントは特殊で、お前の身体の中にある天使の実の力を使い、このペンダントの中に新たな実を作る。だから、これは絶対に無くすなよ」
受け取り、身に付ける。
まるで小さな試験管のようなものが先にくっついたようなもの。中身は空っぽで、何も入っていない。
「それから、もう一つ。力は同時に使えない。覚えておけ」
「?」
「悪魔の実と、天使の実の力だ」
そう言って、目の前にたくさんの果実のようなものを、また、指を鳴らして出した。
それはきっと悪魔の実なのだろう。
「何の実がいい?」
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