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パワーストーン物語
D
公子はこの時もう自分の心臓は止まった・・・ 
そう感じたぐらい、さっきまでのあの大きな声も一瞬で失われたように力が抜けてゆきました。
姉の梢も同じように放心状態で、あえて黙っているのではなくて公子と同じように何も言えなくなってしまっていたのでした。
私達のやさしい父さんはもう動かない・・・父さんはもう死んでしまったのだ・・ 早すぎる死・・・ 
突然過ぎる深い悲しみが幸せな家族に襲いかかったのです・・。 
公子も梢も母さんもその日から涙は一滴すら流れませんでした。
これから私達はどう生きて行けばいいのでしょうか・・。
それからの公子は時間が流れても流れてもそれでも涙は一滴もこぼれませんでした。 
お通夜やお葬式を無事済ませて・・ それでも公子はまだ泣けなかったのです。
「私は父さんが大好きだった・・・あれ程慕っていたというのに涙が出ないなんて私は本心から父さんを好きでいた訳ではなかったのかしら・・・!? 
父さんがもう二度と動かなくて、もう二度といっしょにお風呂に入ったり遊んだりも出来ないと家族から教えられた弟達はお棺に手を延ばしたり父さんの腕を引っ張ってみたりわがままを言って周囲をよけいに悲しい思いにさせましたが、それでも叶わない思いに三人共それぞれが泣いて泣いて泣きわめいたのですが、それでも公子の涙は流れ落ちることはありませんでした。
人間はあまりに深い悲しみの前にたたされると涙が出なくなるんだと初めて知りました。 
女学校に行くと沢山の友達が慰めの言葉をかけてくれましたが、相変わらず公子の瞳は濡れる事はなく、こんなに冷めている自分自身の感覚に腹を立てながら、どこかにぽっかりと空いた穴も埋められずにただ時間が過ぎ行くだけの毎日をおくっていました。 
そんな時でした。
いつも忙しく、お葬式の時にもほとんど顔をあわせなかった父の知り合いのおじさんが突然家にやって来て公子に小さなビロードの箱を渡してくれたのです! 


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