パワーストーン物語 E 「おじさん、これ、何ですか・・・?」 「これはお父さんが公ちゃんの為に買ってくれた公ちゃんの誕生石のざくろ石(ガーネット)の指輪だよ。 公ちゃんの指は特別細いからサイズ直しをしている途中だったんだよ。 お葬式の日にはキミに渡すつもりでいたんだけど、思ったより日にちがかかったんで、おじさん、今日は急いでキミに持ってきたんだよ。 公ちゃんえらかったね・・?悲しいけどずっと泣いてなかったんだろう・・? そんなに我慢しなくてもいいんだよ・・悲しい時は泣いてもいいんだよ・・・ 」 思いがけない父さんからの贈り物と、おじさんのやさしくかけてくれた言葉に公子の奥に隠れてしまってずっと出てこなかった思いが一気に涙となって溢れ出してきました。 そんなには親しくもなかったのに公子は一生分の涙をおじさんの胸で泣きつくしてしまいました。 弟達のように小さな小さな子供に返って、なりふり構わず泣いたのです!! そのおかげでおじさんがその日着ていた高そうなスーツの襟の所に大きな水たまりのシミをこさえてしまいましたが、父の愛の深さを改めて認識する事が出来、公子はその美しく深い赤色の指輪をはめると空の方角・・・天国の方角に指輪をかざして見せました。 「父さん、有り難う!!私、これからはもっと頑張るから!やっちゃん達の見本になれるように頑張るから・・・頑張って幸せをつかむから、そこからずっと見守っていて下さい!!」 おじさんの胸でたっぷりと泣いたお陰でなんとか公子の心臓はまたゆっくりと動き出していました。 そしてやがて時間(とき)は過ぎ、最初に姉の梢が社内恋愛の末、めでたく将来の伴侶となる人と出会い結婚をしました。 旦那様となった男性は生前の父さんとほんの少し顔見知りの人でした。 妹の公子はというと相変わらず勉強は苦手でしたが弟達の面倒をよく見、無事に女学校を卒業し、働きに行くとすぐに職場の人に半ば無理矢理紹介された男性と結婚する事になりました。 ところがこれまた偶然というものは重なるもので、姉と同じく公子の旦那様になった男性も亡き父とは多少面識があった人でした。 きっと早くに他界して娘達に苦労をかけてすまないと感じた父が年頃になった娘達に最高のご縁を運んでくれた・・ 梢も公子にも女手ひとつで5人の子供をりっぱに育て上げた母にもそんな風に感じる事こそが自然だったのです。 父の形見となった指輪は梢や公子に沢山の幸せをもたらしました。 特に公子は父を亡くしてからとても強くなりました。 父が生きていた頃の公子は頑張る事が嫌いで両親に甘える事で要領良く生きていたのですが、今は家族や周囲の人からも忍耐力がついたんじゃない?と言われるぐらい自然に頑張れる人になっていました。 それがガーネットの石の持つ力と知ったのは公子がようやくおばあちゃんになった頃であったという事です。 おしまい [前へ] [戻る] |