APH/novel
V
同刻。
日本、イタリア、ドイツ、プロイセンの四人は命の心配が最もされていたアメリカと合流している所であった。
「いやー…たまたまとは言え、日本達が居てくれて良かったんだぞ!」
「…アメリカさんが無事で私も安心しました。」
「ヴェ〜、アメリカが時間稼ぎ役を決めた時には、もう俺達、声は聞こえてたけど結構遠くまで走っていっちゃった後だったからね。すっごく心配したよ。」
あの後。アメリカはあの化け物と暫く対峙していた。しかし、たった一人でそれを倒すことなんて出来る筈も無い。
イギリスを背負ったフランスが見えなくなるのを確認してからアメリカは撤退を試みたのだった。
フランス達が向かったルートとは違う方向に逃げたのだが、うまく化け物を撒くことに成功し、更にはたまたまだったが日本達のグループに合流出来たのだった。
「でも、あの化け物が時間の狂ってる部屋に入らない限り危ないのは変わらないんだぞ?」
「…その確率は極めて低いだろうな。時間が違う部屋はもうほんの一握りしかない。」
「じゃ、じゃあよー、1つだけ聞くけど……。」
「…プロイセンさん、きつい言い方にはなりますが、ネガティブな事をご質問なさる気でしたら申し訳ありませんが口を慎んで下さいますか…?」
「……。」
「日本はいっちばん心配している人が別行動だから心配で心配で気が気じゃないんだよね〜?」
「な…そ、そういう訳ではあの…!!」
こんな状況と言うに、イタリアの放ったその一言が日本の色白な顔色を真っ赤にさせてしまう。
ポコポコと噴出される湯気もおまけで。
「ちち、違…!違いますよ!私は別に…!い、イギリスさんにはちゃんとフランスさんが着いていますし心配なんて……」
「…イギリスが心配なのか。確かに納得が行くな…。お前逹は同盟を組んで」
「うわぁあ!ドイツさんもお願いですから止めて下さい!恥ずかしいですから…!」
「何ぃ!?日本!君イギリスの事が」
「あー、あー!!」
アメリカのばかでかい声を日本の声量がかき消せる訳もなかったが、恥ずかしがりやの日本はこうする他に無かった。
「…珍しく日本が活発だな……。」
プロイセンは参加せずにただ一人、その様子を見ていた。
日本を茶化すことは悪いことだが、この暗い雰囲気を取り払うにはいい材料になったのだろう。空気の悪さはいくらか軽減されていた。
「も、もう…人の恋路を邪魔するなんて貴方逹は…………あら?」
ふと話の腰を折って、日本がゆっくりと品のある動作で進んでいる方向とは逆の向きに振り返った。
「?どうしたんだい、日本。」
「……今………。」
唇に人差し指を宛て、皆に喋らないように、もとい物音を立てないようにさせる。
暫くの沈黙の中。
薄らとだけだったが、何かの叫び声とガタガタとかなり大きな物音が響いてくるのが何となく解った。
聞きなれていない人間なら喧嘩をしている声と物音に聞こえただろう。
だが、この状況では。
「……やっぱり。誰かが、戦っているような声と音が聞こえます…。」
「本当だ!」
「も、もしかしたら…」
「今回はプロイセンさんのマイナスな意見が正しそうですね…行きましょう!イギリスさん逹だったらたった二人です…倒すことは出来ませんが上手く逃げられるようにしましょう」
「マイナスってゆーなよ!!」
日本の提案にケチを付ける者はなく、素早く五人はその方向へと走っていった。
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