APH/novel U 「…イギリス、お前大丈夫なの?」 フランスは後ろを向くようにしてイギリスの方に顔を向けて尋ねた。 「…何がだよ?」 「相当無理してんだろ?さっきだって歩くのも辛そうだったし、もしあれなら寝てたら?」 冗談じゃない。と、イギリスは思う。 さっきからこいつには負担を掛けすぎている。人一人背負って化け物から走って逃げることがどれだけの事だったか。 それに、精神的にまいっているのはこいつだって同じことだ。 こいつを置いといて自分だけ眠れる筈がない。 イギリスは、フランスの提案に反論はしなかった。フランスは突っぱねれば突っぱねる程しつこくしてくるのを知っていたからだ。 「…大丈夫だ、休んでいればすぐに元通りになる。」 イギリスは頭の中だけでフランスに小さく礼を言い、抱き付くようにして彼にもたれ掛かる力を甘えるように、ほんの少しだけ強くした。 普段甘えることなんて中々出来ない可愛い恋人の行動は、今のフランスに取っては至極暖かいご褒美であった。 「……なぁ、フランス」 「ん?なぁにー?」 「…………。」 「何だよ、黙ってちゃ解んないよお兄さん。どうしたんだよイギリ、す……」 フランスはつい、足を止めてしまった。 いや、この場合はわざと止めた、が正しいのかもしれない。 「……何か、聞こえる。」 音の響きやすい廊下の中、二人は物音をただ殺して耳を澄ませる。 ――カツン。 ――カツーン……。 [*前へ][次へ#] |