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「――駄目だ、追ってくる!!」
「もういい!もういいから…!もういいからフランス!俺を捨てて………。」
――――してる。
「……………。」
「おい!聞いてんのかフランス!フランスッ!!」
「……こっちの道だ。」
イギリスを背負ったフランスは、突然ルートを変えて走り出した。
追い掛けてくる化け物も気にせず、咄嗟に。
「え……?」
「こっちに…こっちにアメリカ達が居る!」
「な、何で何言ってんだよ?アメリカはさっき」
「皆で逃げれる!!」
はっきりと言いはなって、イギリスの言葉を無理矢理に遮る。
フランスの言葉通り、そこには……日本と、アメリカとイタリアとプロイセンとドイツの姿が見えた。
「……え……!?」
「でもって、多分、なんとなくだけど白いピアノの部屋の手前辺りに中国達がいるような気がする!」
「はぁ!?お、お前なんでそんな事解るんだよ!」
「……解らない。」
解らない、けれど。
「……そうしないと、俺、…凄く後悔する事になるような気がしたんだよ…。」
「……フランス?」
イギリスを背負ったまま、日本達と合流する。その後、日本達と一緒に逃げながらピアノの部屋の手前まで来れば、本当に…中国達が居た。
近くに時間のまだ治っていないだろう部屋を見つけ、皆でそこに逃げ込む事に成功する。
「はー…っ、はあ…は……っ、……よく、フランスさんここまで解りましたね…。」
「…いや、なんとなくなんだけど、な…。直感が当たった…だけ、みたいな………。」
「……フランス……。」
自分を背負ったままで走り続けたせいだろうか、他の皆よりも呼吸の荒いフランスの背をそっと撫でるイギリス。
「……大丈夫かよ?」
覗き込んでくるイギリスの美しいエメラルド。
疲労で力ないようにも見えるが、はっきりとした焦点は自分に当たっている。
髪の毛はひらひらと揺れていて。
……なぜか腹部を見てしまった。傷がない。
「………あれ……。」
「!?、フランス!?」
悲しくも、なんともない筈なのに。
勝手に両目から涙が、つうと流れた。
「ど、どうしたんだよいきなり!?」
「わ、わかんねぇよ…疲れたのかなお兄さん…」
自分でもその涙の理由がさっぱりといっていいほどに解らない。
…でも、よく解らないけれど、…気持ちが暖かい?
「…イギリス、」
「何だよ?」
「……無事で、良かった……。」
気が付いたら。
イギリスを抱き締める自分がいた。
「…は?え、ちょ、はぁぁあ!?いや離せよ何言ってんだよ急に!」
「え?あ?あれ!?あ、え、あ、うんそうだよな…あ?何コレなんかお兄さん今日おかしくね?」
「変過ぎんだろ!大体お前こそ大丈夫なのかよ、さっき化け物に踏まれて剣で…」
「え?」
「あ?」
「…お兄さん、踏まれてなんか無いよ?」
「…え……あっ……。」
目をぱちくりとさせながら、二人して合わせる。
よくは解らない。
解らないけれど……。
理由がなければこの二人は周りが居るときにスキンシップなんて死んでも取らない。取らないのに。
気が付いたら、イギリスの手のひらをぎゅうと握りしめていた。
「……よかったね、今度は間違えなくて。」
イタリアはその場にいた誰にも聞こえないくらいの声で、そう呟いた。
―――――――――
おまけ。
「そーいや何か手の甲に違和感あんだよなぁ…」
「化け物にでも乗り移られたんじゃないのかぁ?」
「んな訳あるか!……でも妙に暖かいんだよな…」
「マジじゃねぇのそれ」
「…………。」
「…イギリス?ちょっと何して…んのぉおお!?」
自分の手の甲に口付けを落とすイギリス。そのままにぃと笑う。
「いやな、よくわかんねぇよ?わかんねえがこうするとフランスが慌てる気がしてな。」
「だぁーっ!バカ!イギリス何やってんのお兄さんあれは黒歴史だから!マジ黒歴史なの!お前が元気だったらやってねぇのー!」
「……なんであそこまで記憶してるのにちゃんと思い出さないんだろう…」
「イタリア君?」
完。←
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