APH/novel
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次々と退室して、最後にはイギリスと二人きりになった。
だが、扉が閉められる直前、ドイツはフランスにひとつだけ皆に聞こえないように耳打ちをしていた。
――時間制限はしないが、もう此所に来ることは認めない。
厳しい言葉だったが、これもドイツなりの優しさだったのだろう。
此所に何度も来るようになってしまえば、いざ脱出する段階になってフランスがこの部屋から出られなくなるのを危惧したのかもしれない。
「……イギリス。」
小さく足音を響かせながら、ドアと真逆の方向にあるベッドへと近付く。すぐ側まで来ればフランスは、イギリスの頭の側に腰かけて彼の白い手を握り締めた。
言葉にはしなかったけれど、沸き上がる思いは止められなかった。
俺はお前の事がずっとずっと好きだった。それを伝えるのが何となく恥ずかしくて、お前もお前で伝えたりなんかしたら顔真っ赤にして大きな声で『ばかぁ!』なんて叫んでくるのが、スッゲー可愛くてむかつくから、時にはお返しに文句や皮肉を返したりもした。
それでもやっぱりお前の事が心の奥にいつも居て。誤魔化すために他の女の子に目移りしたフリだって沢山してきたけど、やっぱり好きだったんだ。
でも。それでも。
「ほんっと…眠ってた方が、お前は可愛い顔してるねぇ。……でも、ちょっとくらい大声出して怒ってくれたりしないの?」
そいつはもう、この朱に飾られた素敵で美しくて可愛くて綺麗な人形になってしまった。
「…ねぇ、……イギリス……。さっき…嬉しかったって言ったらお前は赤い顔して俺に文句言うだろ?」
さらり、と髪を撫でる。
手入れのされていない髪の毛は自分ものとは比べ物にはならないけれど、この手触りが寧ろこいつの髪の毛なんだと知らせてくれてひどく安心する。
「でも、今だから言うけど俺はそんなとこ嫌いじゃあ無かったけどね。…お兄さん、ちっちゃい頃こそお前を弄って遊んでたけどアレはお前、あれだよ?ほら男の子って好きな子苛めたくなっちゃう…感じ?」
くすくすと暖かい微笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく。それでもイギリスは返事すら返してはくれなかったが、聞いていてくれているとフランスは信じていた。
「最後の審判の時にはじめて会ったと思うだろ?違うんだなそれがまた。俺ずーっと気になってたのよね、ちんちくりんのいじめられっこの癖に強気な奴が居るって聞いて茶化してやろうと思ったら案外いい子だったからさ。お前と遊んでる内にお兄さんも千年以上経っちゃったんだなぁ、なんて染々実感するねぇ。」
愛おしそうに、何度も髪の毛を撫でてやる。
イギリスは真っ赤になって毎回拒否するけれど、一番これが喜ぶのをフランスは知っていた。
「…んで、お前が髪の毛伸ばしたりした頃にはもう惚れてたかもなぁ…。かわいかったなあの頃のお前。ちょっと虐めるとすぐ反応するから、つい茶化しに行っちゃうんだよな。切っちゃってごめんなーアレー。」
まるで、思出話をしながら懐かしむように。
「そんで暫くしたらアメリカが生まれててさ。確かにあのとき領土は欲しかったのもあったけど、お前俺の事どんどん放っといてアメリカの世話焼くと思ってむかついて引き込もうとしたのはあいつには内緒な?」
まるで、何もなかったように、平和に語りかける。
「あー、後お前が俺より強くなり出したのはちょっとお兄さん腹立ったかな百年戦争やりすぎじゃないのアレ?後海賊やられた時は流石のお兄さんもびっくりしたってー。」
今度は優しくぺちぺちと髪の毛を叩いてやる。
「…昔っから世話焼いてやっても可愛くないことばっか言いやがってぇ。連合時代にやーっと付き合えたと思ったら喧嘩ばっかだったよな俺とお前は。」
…………嗚呼。
「……まだ、なにも言い返してくんないのな。」
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