page1 「ただぃま…」 帰って来たのは深夜1時。 明日もドラマの撮影で、もうすぐ最終回で、すげー大事な時期だってのに…。 「ぁ−喉痛ぇ…」 私、田中聖 なんと風邪を引いてしまいました。 今でも頭がボォ〜ッとしてて、喉痛くて辛い。 最近になって東京で一人暮し始めたから、家には当然の如く誰もおらず、母ちゃんがわざわざ寿司作りに来てくれたみたいだけど、今はもう辛さのピークで食事どころじゃない。 風邪引いてるときって、独りは怖くて、寂しくて…。 だけど風邪移すワケいかないから親友はよべないし、今いっちばん会いたい人には尚更で、向こうも忙しくて俺になんて構ってられないだろう。 だから俺は少しでも気を紛らわすためにweb.にそのことを書いた。 『アイツ見るかもしんない』って一瞬思ったけど、忙しくてわざわざんなとこ見ないだろうと思い直して載せた。 「ぁ〜もう無理……死ぬ‥」 寝巻に着替えるとベッドの上に俯せに寝っ転がって、風邪で乱れる呼吸を少し落ち着かせた。 部屋中が静寂に包まれて、グワッと寂しさが押し寄せてきた。 やっぱり 会いたい あいたい ぁぃたぃ…… ―ピーンポーン 「っ……」 泣きそうになってたのを遮るかのようにインターホンが鳴った。 「っ誰だよ……」 大体こんな夜中に押しかけてくるのは赤西と喧嘩した亀か今の状態を知ってるマネージャーぐらいだ。 力無く玄関まで歩いていって、ドアをガチャッと開けた。 「っ……た‥ぐ、ち…」 いっちばん会いたかった人が、今目の前に立ってる事実を飲み込むのに時間がかかった。 「っ大丈夫?」 「っなん、で…」 ―ギュッ 「web.にあんな風に書かれたら、彼氏なら誰だって心配する…」 人の温もりが、ジワァッと身体に染みていく。 田口の言葉が、嬉しいけど恥ずかしくてつい照れ隠ししてしまう。 「バッカじゃねぇのっ‥?風邪っ移る‥し、お前だって…明日っ早、ぃ」 涙が勝手に出てくる。 言葉に上手くできない。 なんか頭ガンガンしてきた…。 そう思った途端、フッと全身の力が抜けて、田口に縋った。 . [次へ#] |