[携帯モード] [URL送信]
page8/8



あれから亀はひとりでずぅっとぼ〜っとしてて、流石にちょっと心配になった。

そしたらいきなりスクッと立ち上がって、俺のとこまでやってきた。


「仁…。」

「あ?何?」


大事な話のときは、亀は決まって俺のことを仁って呼ぶ。

昔みたいに。


「大事な…話、なんだけど…。」

「ぅん。何?」

「っ……」


此処じゃ話しにくいらしく、亀は黙って俯いてしまった。


「…亀っ何か飲み物買い行こ!」

「ぇ…」

「早くっ」

「ぅん…」


そして楽屋をでていった。






スタジオ前の階段に腰掛けて
一息ついてから話しかけた。


「で?どうした?」

「…仁さぁ……痴漢にあったことある?」

「えっ、ん〜そりゃあ尻撫でられたことぐらいはあるけど…。亀…今日痴漢されたの?」


亀は何も言わずにコクンとだけ頷いた。


「っでもそんな深刻なことじゃなくないっ?(笑)…だって、尻撫でられたぐらい…でしょ?」

「……」


亀は黙ってしまった。

それによくみると身体が震えてる…


「…もっと…ヤバイことされっ‥た?」


恐る恐る聞いてみると、少し口唇が動いた。


「っごめん。なんつった」

「…直接触られた…」

「っ!?」


一瞬言葉が信じられなかった。


「っ…気がついたらっ、パンツの中に‥手ぇ突っ込まれてて…。…っ満員電車だからっ、なんもできなくて…。しかもっなんか変な声でるしっ‥‥。叫びたくてもっ、声でちゃったら、恥ずかしいし…。怖くてッ‥叫べなかった…」


亀の声は震えてて、今にも泣きそうな声だった。


「そしたら…メンバーの中にも‥俺のこと、そういう眼で見てる奴ぃんのかなって…っなんか、そんなこと思っちゃって……。中丸に触られたら、電車の中のこと思い出して…。だからっ、振り払っちゃった…。」


膝に顔を埋めて、泣くのを必死に堪えてる様にも見えた。


「俺っ…どぅしょぅ…。…怖い…」


膝に顔埋めたまま、
とうとう泣き出してしまった。

こんなに弱い亀を見たのは初めてだった。


初めて亀が小さく見えて

唯々、守ってやりたくなった。

抱きしめてあげたかった。


でも男に対して拒絶反応を示してる亀を、
抱き締められなかった。

亀に触れることが許されなくて、なんだか少し苛々した。




.


[*前へ]

8/8ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!