居酒屋で恋して
居酒屋で恋して 3
え?
えぇ?
うっそー!
颯人さんが、僕を送ってくれるなんて夢みたい!
僕は嬉しくて嬉しくて、小躍りした。
「チィちゃ〜ん、お店閉めるから後片付け手伝って〜。」
「は、は〜い!」
わっ。イケない。
早くお店の後片付けをしなくっちゃ。
僕はルンルン気分でお皿やビールジョッキを下げてから、テーブルを綺麗に拭き、箒で床を掃き終えてから業務を終わらせた。
「ふぅ。全て完了!」
僕が満足気に一息ついていたら、颯人さんが来て頭を撫でられた。
「チィ、着替えたら裏手で待っててくれ。直ぐに行く。」
「はい!」
僕は急いでロッカールームに行く。
バイト仲間の朱美さんは既に着替え終わって帰ろうとしていた。
「チィちゃん、お疲れ様。」
「お疲れ様です、朱美さん。」
「痴漢に襲われないように気を付けて帰るのよ♪」
「もぅっ!僕男ですよ。朱美さんこそ気を付けて返って下さいよ!」
「はいは〜い。お先に〜♪」
ったく元気な人だなぁ。
同じバイトの朱美さんは大学生で、この居酒屋に3年も勤めている。
このハードな仕事を学業と両立しているなんて凄いよな。
僕も素早く着替えてから、お店の裏手で颯人さんが来るのを、しまりのない顔で待っていた。
エヘヘヘ。
居酒屋で働いて初めてだなぁ〜、颯人さんに送って貰えるなんて。
それもそのはず。
だって颯人さんの住んでる所ってお店の上なんだもん。
で、でもなんで急に送ってくれるんだろう?
ま、まさか・・・///。
颯人さんも僕のこと!
「はぁ。そんなワケないのに。」
1人で盛り上がったり、下がったりしていたその時、暗闇から人影が現れた。
「やぁ、チィちゃん。やっと出てきたね。ずっと待ってたんだよ。」
目を凝らして見てみると、さっきラストオーダーを取りに行った時のセクハラ親父だった。
「な、なんで此処にいるんですか?」
酔っているのかユラリと体をゆらせてから、僕の側までやって来た。
「なんでだろうね?ククク。」
その不気味な笑い声に僕は寒気を覚えた。
「怯えた顔も可愛いねぇ。僕はね、チィちゃんのこと前からずっと見てたんだよ。だから・・・いつか2人で話してみたいなぁって思ってたんだ。」
セクハラ親父は話しながら僕の肩を掴み、酒臭い息を僕の顔に吹き掛けてきた。
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