居酒屋で恋して
居酒屋で恋して 2
バイトの時間がたつのは凄く早い。
体を動かして一生懸命働いているからだと思うんだけど、颯人さんと一緒にいる時間が短く感じるから寂しい。
「チィ、ラストオーダーの時間だ。テーブル回ってくれ。」
「はい!行ってきます。」
各テーブルを回ってお客様にラストオーダーを聞いていく。
大体のお客様は注文を頼まずに、そろそろと帰る支度をするんだけど、盛り上がってる大学生とか、コンパをしている所はまだまだこれから行くぞーって感じで、中々終わろうとしてくれないんだよね。
今日は週末だから何組いることやら。
角のテーブルにサラリーマンのグループがコンパしていたので、声をかけに行った。
「お客様、ラストオーダーになりますがご注文はありますでしょうか?」
すると、お客様の1人が僕のお尻を触ってきた。
「わっ?」
僕はビックリして、体が跳ね上がった。
「お客様?」
「やっ、済まない。君可愛いから、なんか触りたくなっちゃって。ごめん、ごめん。」
まだ若そうなサラリーマンの人は悪びれることもなく謝った。
か、可愛い?
可愛いからって男のお尻を触るか?
しかもそれはセクハラだろ!?
キレそうだったが、ここはお店だから我慢しようと思い、再度聞いてみた。
「ラストになりますがご注文はございますか?」
「いーや、ないよ。もうお開きにするから。ありがとね、可愛いコちゃん!」
ブチッブチッ。
血管が切れる音が聞こえる。
僕の形相が変わっていくのが分かったのか、バイト仲間が僕をお店の奥へ引っ張って行った。
バンッ!
エプロンを外して床に投げ捨てた。
「アー!腹が立つぅ!なんだよ、あいつ!人のお尻を触りやがって!しかも可愛いコちゃんなんて言って!」
「チィは可愛いぜ。」
僕は振り向いて声の主を見た。
は、颯人さん!
ボワッ!
怒りで真っ赤になった顔が、恥ずかしさで更に真っ赤になった。
「チィ、嫌な思いさせたな。大丈夫か?」
颯人さんがそう言いながら、僕の髪の毛を指で優しくすいてくれた。
「は、はい。」
大丈夫じゃないけど、颯人さんに心配かけたくなかったから、ついそう言った。
「チィ、今日は送ってくから、着替えたら裏で待ってろ。」
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