居酒屋で恋して 居酒屋で恋して 13 颯人さんが息を飲むのが分かった。 あぁ、きっと気持ち悪いって思われたんだ。 そりゃ、そうだよね。 だって男同士なんだもん、当然だよ。 僕は颯人さんの顔が見れずに下を向いていたら、颯人さんの長い指先が僕の顎を捉え、そのまま上へと上げさせた。 そして颯人さんの端整な顔がより引き締まって、今まで見たことのない大人の男の顔に見えてドキッとした。 「俺も好きだよ、大事に思ってる」 アァ、分かってない。 いつもは僕の事を誰よりも分かってくれてるのに、こんな時に限ってどうして鈍感なんだろう? 「違うの、違う!僕は颯人さんに抱いて貰いたいって思ってる好きなの!颯人さんの弟みたいに思ってくれている好きじゃないの!」 一気に捲し立てて、今話したことに今更ながら赤面した。 抱いて貰いたいって言ってしまった。 「・・・チィ、俺」 「か、帰る!」 颯人さんから一刻も離れたくて、僕は立ち上がって浴室から出ようとした。 だけど颯人さんに腕を掴まれて、颯人さんの胸の中に収まってしまった。 「颯人さん離して!」 もがいて抜け出そうとしたら、颯人さんにギュって抱き締められた。 アッ・・・///。 颯人さんの鼓動が聞こえる。 「チィ、俺はお前が好きだって言ったよな?」 颯人さんのバリトンボイス。 「言った、けど・・・でもそれは」 「俺もチィを抱きたいって思ってる好きだ」 その言葉を聞いた瞬間、時が止まったような気がした。 なんて言ったの? 空耳じゃないよね? でも、まさか、有り得ない。 そんな都合の良い話。 「チィ?」 「う、そ・・・」 喉がひくついて乾いた声が出た。 「嘘じゃない。チィがバイトに来てからずっと気になってた。最初は弘瀬の弟だから俺も弟みたいに思って接してたけど、だんだん可愛くなってきて仕方なかったんだ。気付いた時には、チィのことが好きで堪らなくなってた」 うそーー!? ホントにホントにホントなのー? 颯人さんが僕のことを、好き? 信じられない!! 何も言えなくて、ただ颯人さんを見つめていた僕を、颯人さんは優しい目で見つめてくれた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |