鳳凰の宮学園
tatsuya 出会い
面白い奴だったな。
何処といって、何の取り柄もなさそうな平凡な奴だったけど。
百面相。今思い出しても笑える。
それに笑顔が可愛いかった。年上にはとても見えなかったけど。
自然と笑みが零れる。
「なーに、ニヤニヤしてるのかなぁ?我が中等部の生徒会長様は。」
俺は話しかける奴を無視して歩き続けた。
「あっ、おい、龍弥!親友を無視すんのかよー。」
俺は仕方なく止まって、声の主を見た。
「何の用だ、晄?」
親友の晄は俺の肩に手を回し、笑顔で話し掛けてきた。
「さっきまで不機嫌だった奴が、学校に帰ってくんなり機嫌良くなってんのを見たら、親友の俺としたら気になるじゃん。」
目敏い奴。
俺と晄は中等部からの付き合いだ。話しも合うし趣味も合う。生徒会にも入っていて、晄は副会長だ。
さっきまで街に一緒にいた。
年末から続いてる族同士の抗争に俺と晄は、助っ人に行っていたのだ。
「で、何があったんだよ。た・つ・や!」
「何もない。」
晄に領の事を話すつもりはない。
いずれバレるだろうけど。
それまでは誰にも知られたくない。
領と二人だけの時間を持ちたいんだ。
「ふーん。」
晄はそれ以上問い掛けてはこなかった。俺が言いたくないことを無理には聞かない。俺達はこの距離感が気に入っている。
「まっ、いっか。龍弥が幸せなら。」
俺は吹き出した。
こいつは時々、思いがけない事を言う。俺自身でも気付いていないのに、晄には解る時があるみたいだ。
けど今回は晄の言う通り、俺も解ってる。
領が好きだ。
一目惚れって本当にあるんだな。
俺が一人で笑っていると晄は珍しそうに見つめていた。
「ひひひ。龍弥、上手くいったらちゃーんと報告しろよ。大親友の俺様に。それまでは何も聞かないでやるからな。」
晄はウィンクをしながら俺に言った。
「さっ、早くメシにしようぜ。腹へったぁ。」
俺は頷いた。
そして領のことに思いを馳せた。明日から忙しくなるだろうな。
俺と領との恋を実らせるために。
なんたって俺は年下だから。
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