眠れぬ夜
海 3
お祖母さんの実家?
つまり、それは・・・不動のお祖母さんの家、ってことだよね?
不動のルーツの場所なんだ・・・。
海を眺めながら、そんなことをぼんやりと考えていたら、不動がなんだか照れ臭そうにして話し出した。
「ダチや女も誰も連れてきたことなんてなかったんだ。」
そして僕の瞳を見て。
「お前が初めてだったんだ、連れて来たいと思ったのは。」
なっ・・・///!
不動は僕の息の根を止めたいんだろうか?
そんなこと言われたら、嬉しくて嬉しくて胸が張り裂けてしまいそうになる。
感動に浸ってその場を動けずにいると、前を先々歩く不動の後ろ姿が見えた。
追いかけようと一歩踏み出し掛けたけれど、不動のその後ろ姿を見て、僕はなぜだか切なくなり、ひたすら見つめていた。
あぁ!
不動、僕は不動が好きだ。
好きで、好きで堪らない。
最初は恐くて最低な男としか思わなかったのに、今では優しくて男らしくて、ぶっきらぼうな所が可愛いとさえ思ってしまう。
僕のこの気持ちに嘘偽りはない。
そして不動も、僕のことを好きだと言ってくれた。
だけど・・・。
不動に告白されたのも、未だに夢なんじゃないかって、嘘なんじゃないかって考える自分がいる。
だって、そう思うのが普通だろう?
不動は同性から見ても、申し分ないぐらい男らしくて格好良いし、女性から見ても魅力的だろう。
安西さんみたいな美少女からも好かれるぐらいだから、きっと綺麗な女性にモテるはず。
そこで、考えてしまう。
不動はどうして僕を好きになったんだろうかって。
男で・・・身体だけの関係だった。
会話らしい会話なんて、したことがないし。
考えれば考えるほど、不動が僕を好きだなんてあり得ないと思えてくる。
「・・・みや、鷺ノ宮?」
僕を呼ぶ声が聞こえたので顔を上げると、不動が目の前にいた。
驚いた僕は思わず大きな声が出た。
「ワッ!?不動、びっくりさせないで。」
「ワリィ。」
謝っても僕の瞳を覗きこんでくる不動に、ドギマギする。
「な、なに?」
「お前が泣きそうな瞳をしてたから、心配になった。どうした?」
優しい低音の声が、僕の心を鷲掴みにする。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!