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By My Side
Wingless Bird 2

「俺ァ無理矢理なんて趣味はねーからな。嫌なら嫌って、そう言いやがれ」  
「……」

二人は黙ったまま見つめ合っていたが、やがて桜が諦めたように瞳を閉じた。 

「今晩はこのまま泊まっていけ」
 
普段よりずっと低い声が耳元をくすぐった。 
無意識に唇から逃れようとする顎を銀時が掴み、強い力で押さえつける。

どうせ体だけの関係なんでしょ?
だったら好きにすればいい。

力で適うはずがない。抵抗を止めた桜は、年月はなんて残酷なんだろうとぼんやり考えていた。
あの頃の二人の思い出は随分と酷いものに変えられてしまったようだ。

いや違うか。
銀時は黙って私の前から姿を消したんだ。
本当は生きていたのに私を捨てていったんだ。

再会してからずっと目を反らしていた事実を認めたら、思い出が壊れていくようで何だか空しくて笑いたくなった。

狭いソファーの上で窮屈そうな銀時の下で、桜の頭の中は妙に冷静だった。一方で身体は勝手に行為を楽しんでいる。
本当は自分だって銀時を責められる立場じゃないことはわかっている。銀時と離れたくない。ただそれだけで、どっちつかずのまま今日まできたのだから。



銀時は目の前の桜に目を遣った。着崩れた着物を纏う桜のどこか醒めた目が辛くて、すぐに目を逸らす。

会いたいから会う、抱きたいから抱く。

さっきの言葉は嘘じゃない。 
だけどこんな目をした桜を抱きたいわけじゃない。

「汚れるかもしんねーから、もう脱げよ」

衿を掴むと桜はゆっくりと立ち上がり、素直に帯を解いていった。

「嫌なら嫌でもいいからさ」
「……」
「そんな目……すんな」

素肌を抱きながら放つ銀時の言葉に、桜は腕の中で首を横に振った。

「ならもっと楽しめよ」 

不意に身体を反転させられバランスを崩しかける桜を、銀時は背中から抱き止めた。

「手ェ、つけ」

さっきまで食事をしていたままのテーブルに、銀時は手をつくよう言った。言われた通り手をつくと、背中に唇が触れる。少しずつ場所を変えながら何度も強く吸われ、時折軽い痛みが走る。
きっと跡がついてるだろうことは、見えなくてもわかった。
それを銀時がわざとやっていることも。

身体だけの関係なんて言っておきながら、銀時は何に対して苛立っているのか。愛してもくれないくせに人を勝手に所有物扱いする銀時に、桜は内心うんざりし始める。そんな桜の心の内が透けて見え、また銀時は辛くなる。

桜は再会してからのことを後悔してると言った。
自分達はあの頃とは違うとも言った。

それは確かにそうだ。今、二人は別に恋人同士ではないのだから。

そして、この関係はこれからも変わらないと、桜は言いかけていた。

だったら今のままでいい。
恋人でなくたっていい。
体だけで繋がっていたっていいから、このままでいてほしい。

そんな勝手な言い分が桜に伝わるわけないのに。

虚しさしか残らない行為。自分でも何がしたいのか全くわからなくなってくる。

過去は消えはしない。
どうしても手放したくないのに、言ってしまった言葉はもう消えない。
未来も見えず、これで二人は本当に最後かもしれないと、銀時は覚悟していた。 

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あきゅろす。
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