カフェ『皐月堂』へようこそ(レナルキ他) 本編2 暗い通路をひたすら移動する。ずいぶん長い時間走り、キュウビモンは息を切らしている。 ――頑張って、キュウビモンッ! 振り落とされないようにとしがみ付く。キュウビモン達の足手まといになってしまっていることが悔しい。私も皆のようにデジモンだったらと考えると、悔しい。移動することさえキュウビモンに迷惑をかけてしまう……。 私達は広い場所に出た。 そこはなんと、墓地だった。 「どうしてこんな場所に出てしまったの?」 暗い丘に石の墓標が点在する。空は薄暗く、雷が鳴っている。風も強い。嵐が迫っているような空だと思った。 ――『城』の中を走っていたはずなのに、外に出てしまったの? 道を間違えてしまったの? 元の通路へ戻ろうとキュウビモンが背後を見て、目を見開く。低く唸り声を上げる彼に続き、私もそちらを見て言葉を失った。 「……!」 今来たばかりなのに、通路は跡形もなく消えている。城の壁面さえ見当たらない。あるのは無限に続く墓標の丘ばかり。 「どうしてっ!?」 「――術にはまっているようですね」 地に降り立ったウィザーモン先生が呟く。腕に抱きかかえているテイルモンさんは、ぐったりとしたまま動かない。 「テイルモンさん、ケガをしているんですか?」 その様子がずっと心配だったので訊いた。 「自分の属性に不利なフィールドでの進化、そして戦闘。あれだけの技を連続して出せば、戦えなくなるのも仕方ないでしょう」 ウィザーモン先生の表情は硬い。 「そんな……」 「通常のファントモンになら、彼女は勝てたでしょう。けれどあのファントモンは途中で様子が変わった。まるでパワーアップしたように見えましたが、あの全身に浮かび上がった奇妙な文様は、古代のデジモン世界に伝わる禁忌の術に似ているようです。あれを施すのはよほどの知識が無いと不可能。なのになぜ……」 「術って、魔法みたいなものですか?」 「似ていますが、彼らのそれは自らの構成データそのものを改造するようなものでしょう」 テイルモンさんが身じろぎした。 「テイルモン?」 ウィザーモン先生が呼びかけると、わずかに瞼を開ける。 「後のことは任せて下さいね? ドクターストップとします。しばらく休んで体力を回復させて下さい」 テイルモンさんが何か文句を言いたそうに眉をひそめた。けれど、そのまま瞼を閉じた。話すのも辛いみたい。 「少しの間、彼女をよろしくお願いします」 ウィザーモン先生はふわりと空中に浮かび、私へとテイルモンさんを差し出す。 落とさないようにしっかりとテイルモンさんを抱えると、私はウィザーモン先生を見つめた。 「ここで戦うんですか?」 「見たところ、ファントモンの得意の場所らしい。デジタルワールドにあるオーバーデル墓地に似ている」 「オーバーデル墓地?」 「ファントモン達、ゴースト型のデジモンが多く住む場所です。どうやらこの城の中では、ファントモン達には有利なよう、バトルフィールドまで作り出せるようですね」 ウィザーモン先生がそう言ったとたん、周囲の墓標が光りだした。 「牧野さん、キュウビモン、下がっていて下さい」 強い風に、ウィザーモン先生のマントが翻る。その裏に描かれる奇妙な文字が微かに光っている。 「出てきなさい」 ウィザーモン先生が呼びかけると、低い声が応える。 「その聖獣型の代わりに戦うっていうの? アンタごときがアタシを相手にするわけ?」 突然、ウィザーモン先生のすぐ目の前にファントモンが現れた! 全身に黒い奇妙な模様を浮かび上がらせているファントモンは、その手に持つ巨大な黄金色の鎌をウィザーモン先生に向けて振り下ろす。 「死ねぇっ!」 それをウィザーモン先生は、マントの影からあの杖を取り出してかざし、受け流すように払いのける。 ウィザーモン先生は左へ。ファントモンは後方へとそれぞれ跳び退る。 相手の出方をみることもせずにファントモンは攻撃に出た。ウィザーモン先生も、すぐに攻撃に出る。防御に出ることはしないで、一気に勝負をつけるつもりなのかもしれない。 キュウビモンが不安そうに微かに唸る。 「……キュウビモン?」 その声の意味を知ろうと、戦うウィザーモン先生を見つめる。 ウィザーモン先生は負けてはいないけれど、ファントモンの方がより優位のような気がする。身をひるがえして低空飛行しながら何度も攻撃を仕掛けるファントモンの鎌が、ウィザーモン先生を切りつけようとする。まるで死神そのものの姿の残忍なデジモンは、ウィザーモン先生の魂を刈り取ろうとしているような恐ろしさを感じさせる。 このままだとウィザーモン先生が負けてしまいそうな予感がした。マスターがいなくて、キュウビモンしか後は戦えるデジモンはいない。 ――キュウビモンに戦って欲しくない! けれど、そんなことを言ってはいられない。 「キュウビモン……」 キュウビモンがこちらへ振り向く。背に乗る私を振り向きざまに見上げ、小さく鳴く。 「私は大丈夫だから。このままだとウィザーモン先生が負けてしまうかもしれないもの……」 そう言ったら、 「大丈夫……」 私の腕の中で、テイルモンさんが呟いた。 「テイルモンさん?」 「聖なる力は邪気を浄化していくもの……」 そう言われ、私はファントモンの様子を見つめる。 ――聖なる力って、あの雷の矢のこと? けれどテイルモンさんが言うような変化は感じられない。 ――このファントモンには効かないの……? ハラハラしながら、その戦いを見守る。何度もファントモンの鎌が墓標や地面に触れる度に、その場所は砕けるように消えた。もしも当たったらウィザーモン先生も無事では済まないはず。 ――ウィザーモン先生っ! ファントモンが黄金色の鎌を持ち直す。柄の中央を持ち、頭上に掲げて水平に振り回す。すると、黒い円が生まれた。前方にいるウィザーモン先生目掛け、それを向けた。 「死んでしまえっ!」 黒い円だったものが瞬時に、魔方陣のように光り輝く。 ウィザーモン先生は咄嗟に腕で、自分の身をかばう。淡い光が壁のように生まれ、黒い魔方陣の光を阻止しようとした。けれど間に合わないっ。 「――――ッ!!」 ウィザーモン先生はその光を浴びた。 悲鳴が響き渡る。ウィザーモン先生のではなく、テイルモンさんの声だった。 「ウィザーモンッ!」 魔に染まる魔法陣に捕われたウィザーモン先生は、片膝をつき苦しそうな表情を浮かべる。魔方陣は変化を始め、時計のような模様へと変わっていく。時計の針の影が見える。それは無気味に時間を刻み続ける……! 「アタシの『死の宣告』から逃れられた者はいないよ」 そう言うと、ファントモンはテイルモンさんを嘲笑う。 「どうだい? アタシと決着付けない? アンタが死ぬところ、ウィザーモンに見せてやりたいわ〜」 「上等じゃないっ」 テイルモンさんが私の腕から抜け出そうとする。 「ダメッ! まだ回復しきっていないんでしょう?」 私はぎゅっと、その小さい体を抱きしめる。 「冗談じゃない。私はアイツの足手まといになるわけにはいかないわっ!」 テイルモンさんは私を突き飛ばす。 「きゃあっ!」 その反動で私はキュウビモンの背から落ちそうになった。かろうじてキュウビモンの背にしがみつく。 「テイルモンさん!」 テイルモンさんは、枯れ草ばかりのその地に降り立つ。ファントモンを睨みつける。 「強がるわね。――さあ、そのちっぽけな命、散らしなっ!」 ファントモンはその手の鎌を振り下ろす。トンボ返りをするように、テイルモンさんはその一撃を避ける。 「さあ、さあっ!」 ファントモンはじわじわとテイルモンさんを疲れさせるよう、鎌を振り落とす。その度にテイルモンさんは避け続ける。だんだん、その額に汗が流れる。 とうとうその一撃がテイルモンさんの頭上に振り下ろされた……! 「テイルモンさんっ!」 私は悲鳴を上げた。 「!?」 ガクンッと、揺れたので私はキュウビモンにしがみ付く。 キュウビモンがその尾を揺らした。九本の尾から一斉に火の玉が放たれ、ファントモンの鎌を攻撃する。 「何をっ!」 ファントモンの声が響く。その手から鎌が転がり落ちるのは同時だった。 すぐにそれを拾い上げようとするファントモンの前に、サッと白い影が走る。テイルモンさんだ! テイルモンさんはそれを前足で弾き飛ばす。枯れ草の上を滑る鎌が向かった先は、ウィザーモン先生のいるところだった。 ――えっ! 「しまったっ!」 ファントモンが声を上げる。 鎌が『死の宣告』の魔方陣に触れる前に、その魔方陣は煙のように消えた! ――どうして『死の宣告』の魔方陣が消えたの? もしかして、黄金色の鎌まで『死の宣告』を受けてしまう、から? 「おのれっ!」 ファントモンがテイルモンさんを攻撃しようとする。その目の前に、ウィザーモン先生が現れる。テイルモンさんを抱えると、その姿はテイルモンさんと一緒に消えた。 「どこに行った!」 ファントモンは周囲を見回す。私とキュウビモンも二人の姿を探した。けれど、どこにもいない。 焦りの表情を浮かべたファントモンが、何かに気付く。跳ねるように、上を見上げる。 「サンダークラウド――ッ!」 「ホーリーアローッ!」 上空が光り、落雷が落ちた――――。 雷に撃たれたファントモンが、恐ろしい悲鳴を上げる。生きるもの全てを地獄へ引きずり込むようなその声に、私は身を震わせた。 上空から、あの八枚の翼の天使とウィザーモン先生が降りてきた。 体のデータが崩れようとしているファントモンが、二人を睨みつける。 「おのれ、覚えていろっ!」 そう言い残し、ファントモンの姿は消えようとした。 けれど、 「へえ、大口叩いてこのザマか?」 という声が響いた。 ファントモンがその方角を見る。私達もそちらを見た。 あの金髪の男がいつの間にか、そこに立っていた。 「どこに行く? 逃げるのか?」 金髪の男は問いかける。 「逃げるですって? 冗談じゃない! もう一度、この屈辱の恨みを晴らすのさ!」 ファントモンが噛み付くように言った。その体には右腕はもう無くなっている。右肩から下が完全に消えている。あの八枚の翼の天使が放った矢が攻撃した場所だと、私は気付いた。 「その体でか? それに『千里眼』も失ったのか?」 「うるさいっ!」 ファントモンが睨み付け、黄金色の鎌を金髪の男へと向ける。 金髪の男が唇の端を上げ、笑う。 「――身の程知らず」 ――え? 私はぎくりと、金髪の男を凝視した。とても怖い気配を感じた。たぶん、殺気、だ。私以外の皆も同じように感じたみたいだった。 ファントモンさえも、瞼を開く。 「今、何て……?」 ファントモンの問いかけに、金髪の男は応えない。薄気味の悪い笑いを浮かべたまま。 そして、ファントモンの上に巨大な落雷が落ちた。 金髪の男が落とした雷で、ファントモンの姿は完全に消えた。 目の前に存在していた者、それが敵でも……その存在を消されたという事実に、私の体は恐怖で震えた。 ――仲間じゃないの? どうして、仲間を殺したのっ? 「仲間っていうのは、協力しあってこそ」 金髪の男は、そう言った。まるで私達の考えていることを見透かしたみたいだった。 「けれど、協力っていうのは――足手まといのフォローをすることではない。『千里眼』を持たないあのデジモンと『仲間』でいる利点は無い。『城』の中に易々と侵入者を許しておいて、これ以上何を弁解するのか……」 ウィザーモン先生が激しい口調で言った。 「何を言うんですか! そんな風に思う関係が『仲間』なんてものだと? 冗談じゃない!」 金髪の男は、ウィザーモン先生を睨み付ける。 「オマエが言うか? それこそ、冗談じゃ済まないな!」 ふと、ウィザーモン先生が何かを思い出したように肩を震わせた。 「思い出しました。貴方は……私の良く知っているデジモンだっ!」 ウィザーモン先生がその目に怒りを湛え、金髪の男へと攻撃を仕掛ける。 「ウィザーモンッ!?」 テイルモンさんが驚いて声を上げた。 ウィザーモン先生はけれども、その手に持つ杖を振り下ろす。杖から生まれた雷撃は、真っ直ぐに金髪の男へ向かった――! 「――決着を付けよう、まずは貴様から殺す! ウィザーモンッ!」 金髪の男の姿が揺らぐ。突然そこから雷の光が生まれた。 二つの凄まじい力が激突し、地面も空も激しく震えた。 「キャアアアッ!」 その衝撃に、私はキュウビモンごと弾き飛ばされた。 何度も何度も、私の頬を撫でる人がいる。 ――誰? 朝なら、おばあちゃんかママだと思った。 ――学校に遅刻しちゃう? 起きなくちゃ……。 けれど瞼を開けるとそこに、キュウビモンがいた。 頬を撫でているのは誰の手かと思ったら、キュウビモンが何度も鼻を押し当てていたみたいだった。 「……キュウビモン……?」 呼ぶと、彼は小さな声で鳴いた。まるで子犬のようなその声に、思わず苦笑した。 ――こんなに大きな姿をしているのに、そんな声で鳴かないで。私は大丈夫だから……。 「心配かけてごめんね……」 起き上がろうとして、足に激痛が走る。左足の裏が痛い。足首から足の裏まで、しびれるような痛みが走る。 「……ひねっちゃったのかも」 すぐ傍にいるキュウビモンの体に支えられながら立ち上がると、彼に微笑みかけた。 「ちょっと痛いけれど、平気だから」 周囲を見回すと、森の中のようだった。でも、生きている森じゃない。枯れ木や倒木ばかりの、死んだ森――。 「ウィザーモン先生……。テイルモンさん……」 名前を呟き、周囲を見回したけれど、姿は見えない。静まり返っている。 「どうしよう……はぐれてしまったみたい……」 キュウビモンがゆっくりとその場に寝そべった。私はその背によじ登る。 「探さなくちゃ。ウィザーモン先生とテイルモンさんに会えたらいいし、マスターでもいいから……」 キュウビモンはゆっくり立ち上がる。その背から落ちないようにしがみついた。 枯れた森の、枯れ枝から覗く空は不自然なほど明るい、白い灰色の曇り空。その色を見ていると余計に不安になる。 「今、何時頃なのかしら? もう夕方ぐらいになっているはずなのに、こんなに明るいなんて……」 八月十六日、水曜日の夕方頃――それかもしくは、もう夜になってしまったぐらいのはず。 『バッカスの杯』がウイルスとして動き始めるのは、八月十八日の零時零分だと犯人達は言っていたけれど……。 「この計画を阻止しないと、大変なことになるのに……」 具体的にどうしたらいいのかも解らないのに、その上、皆とはぐれてしまうなんて……。 キュウビモンが立ち止まり、私へ視線を送る。 「……え? あ、ううん、ごめんね……弱気になっていたらダメよね……」 さすがにこういう状況になるとは考えていなかったので、落ち込むばかりになってしまう。皆と一緒に行けば、きっとアリス達も探し出せて、恐ろしいウイルスも止められるって思っていたから……。 キュウビモンが、ふいっと視線を逸らした。 「あの? え? 違う……違うったら! キュウビモンのせいだなんて思っていないわ! ……デジモンでもないのについてきた私が……いけないのかなって……」 喉の奥が、きゅっと痛くなる。 キュウビモンは驚いたみたい。小さな声で何度も鳴く。 「ごめん……」 ぽたりと、目から涙が零れた。 「私、本当に役に立つのかしら?」 ――招待状、どうして私にもあるのかしら……。 かろうじてまだ持っていたバッグから、招待状の封筒を取り出した。 「……!?」 封筒から光が漏れている。蓄光性のインクを使っているのかと思って、封筒を取り出した。 私の持っていた赤いカードの紙そのものが光っている。二つ折りのカードを広げると、不思議な文字が浮かび上がっている。見覚えがある文字だと思った。ウィザーモン先生のマントの裏に描かれていた文字に似ている……。 丸い円が描かれ、それの内側に丸く一周するように文字が並んでいる。こんな模様、描かれていなかったはずなのに! けれどそれが光を放っている。淡い光を不思議に思いながら、それにそっと、触れてみた。 「……?」 するとその円の中心から、一本の光が伸びた。私へ向かって……。 「え? 私?」 カードを持ったまま慌てているとさらに気付いた。私へ向かっているのではなく、どこかをその光が差していることに……! 「キュウビモン!」 私は彼に、カードを見せた。 「ねえ、これ! もしかしたら『この光の方向へ進め』ってことじゃない? だってこれ、そもそも招待状なんだものっ」 キュウビモンは体の向きをゆっくり変えた。落とされないよう、しがみ付いた。 「オッケーよ。走っていいわ」 キュウビモンは薄暗い森の中を、光が差し示す方へ走り出した。 走っても走っても、無限に森は続いているように感じた。どこまで行っても同じ風景ばかりが続く。 けれどやがて、私達は森を抜けた。 「……!」 その場所からの景色を眺め、私は息を飲んだ。そこから先は、切り立った崖……! 「ねえ、キュウビモン! 私達、本当にとんでもない場所に来てしまっているのね……!」 まるでテレビのドキュメンタリー映像の中にいるみたい。あまりの絶景に、私は溜息をついた。ここから先、どう行けばいいのか解らない。 「もしかして……この崖から降りろっていうのかしら……」 不安に駆られながら、私はキュウビモンに問いかけた。キュウビモンが私に視線を送る。 「……ちょっと、本気なの? 本当にここから降りるつもり? 冗談でしょう? それとも、この先は空中を走って行くの?」 突然、何かが背後から飛んで来た。 「え……!」 それは、バスケットボールぐらいの大きさの火炎だった! 火の玉は、近くにあった木に燃え移る。枯れ木ばかりだから、すぐに燃え広がり始めた。 「キュウビモンッ!」 私の声とほぼ同時に、背後の枯れ木が次々になぎ倒され、赤い肌を持つ巨大な恐竜が現れた。見上げるほどに大きい。三階建ての家ぐらいの大きさ……! 私はキュウビモンにしがみ付いた。キュウビモンが走り出す。私が声を上げる余裕もないまま、 「――――!?」 キュウビモンは崖からトンッと踏み切り、跳んだ。そのまま、空中を走り出す。 ――こーわーい――――っ! 悲鳴を上げられないほど、怖い。真下は吸い込まれそうなほどの谷底が広がっている。怖くて怖くて、涙が溢れる。背後に視線を送ると、あの赤い恐竜は追っては来ないかわりに、次々に火炎の玉をこちらに向けて、口から吐き出す! ――キュウビモンッ! 避けて、避けて――――! キュウビモンは軽々とそれを避けながら走り続ける。 ――とにかく、あの火の玉が届かない場所に走れば……! そう思ったのに。 ――何? 不気味な羽音が辺りに響いた。 ――下?? 驚いて谷底に目を向けると、 「――――!」 巨大な赤茶色のクワガタが現れた。 ――キュウビモン、キュウビモンッ! 下、下に何か、こっち、来る――! あっという間にその巨大クワガタはキュウビモンの目前に現れ、立ち塞がるように睨み付ける。さっきの恐竜より小さいけれど、こっちの方が遥かに不気味っ! 地鳴りのような威嚇と同時に、その顎に持つ巨大な刃のような『ハサミ』で、キュウビモンの体を挟み込む……! ――キャアアアッ!! ---------- 《ちょっと一言》 盛り上がっているところで申し訳ないのですが、この後に第2部本編3を読む前に、第2部番外編2、3を読まれるとより楽しめますv 第2部番外編2(策略 Side:GANIMON) 第2部番外編3(Fighting! Side:LILIMON) [*前へ][次へ#] [戻る] |