槻木くんは猫離れができない
四
この町には幾つかの公園がある。
そこで槻木清羅が十数匹ほどの猫に囲まれ、ベンチに腰を掛けている所を目撃した生徒が何人かいるそうだ。
美術の時間、僕の頭の中は槻木君で一杯だった。
正確には、
槻木君が飼っている”すっごいたくさんの猫”の事で一杯だった。
僕の家族は僕以外全員猫アレルギーだ。
そのため猫を飼うなどということは言語道断。
道端で野良猫を触って家に帰っただけで、家族全員クシャミが止まらなくなってしまうのである。
いわば僕は禁欲ならぬ禁猫生活を強いられてきた。
母に至っては猫の写真を見ただけで鼻がムズムズするらしく、猫関連のものは一切家に置けない。
夜な夜なインターネットで猫の画像を検索し、一人萌えたぎるのが精いっぱいであった。
我慢してきた。抑制してきた。
だが、”すっごいたくさんの猫”という甘美な言葉で、僕の欲望ははち切れそうになっていた。
モフモフしたい。モフり倒したい。
モフモフの毛に顔をうずめてはふはふしたい。
そしてあの獣臭を一滴残さず嗅ぎ尽くしたい。
僕は猫の事となると阿呆になってしまうのだった。
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