槻木くんは猫離れができない 三 3日前─── その日、5時限目は僕の好きな美術だった。 昼を早めに食べて、廊下をいそいそと美術室へ向かい歩く。 移動教室の際は必ず女子トイレの前を通らなければならない。 女子トイレの前に差し掛かると、例の如く女子たちの噂話が耳に入ってきた。 「槻木君って──」 今日も話題は槻木君で持ち切りか。 僕は特に気にもとめず、女子トイレの前を通過しようとした。 「槻木君って家で猫を──」 僕は足を止めた。 「あっ、聞いたことある!すっごいたくさん飼ってるって」 僕は女子トイレの前に立ち尽くした。 槻木君が猫を飼っている、それも”すっごいたくさん” 鼻血が出そうになった。 僕は無類の猫好きだったのである。 <<>> [戻る] |