槻木くんは猫離れができない
二
一方で僕、桜沢 秋臣(さくらざわ あきおみ)はといえば、至って平凡だった。
学校全体で見ると、これといって特徴がない。
生粋の"モブキャラ"である。
僕を見て前髪をちょいちょいする女子などは皆無だ。
むしろ女子を見て僕が前髪をちょいちょいしてしまう。
クラスにもそこそこ馴染めているし、学力も数学以外は平均の更にド真ん中だった。
平均的な男子高校生を絵に描いたような平均ぶりだ。
そんな背景みたいな僕にも周りと違う所がある。
槻木君と廊下ですれ違ったりしても特にソワソワしないという所だ。
彼に全く興味がなかったと言えば嘘になる。
しかし彼は別の世界の住人で、僕なんかとは無縁なのだと思っていた。
"絶対に手の届かぬもの"
100カラットのダイヤモンドのような存在。
美しいとは思っても、そう言うものには最初からあまり興味を持たない質だったのだ。
そんな僕が何故、槻木君の腕の傷をうっとり眺めているのかというと、
時は遡り3日前、女子トイレの前を通過したときのことだ。
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