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虹の彼方 54





…そして、同時に疑問が湧いてきた。

そう言えば…雲雀さんはどうなんだろう?


今まで…
誰かとお付き合いをしているという噂を聞いた事は一度もない…。






一方的に言われ、
ちょっと悔しいので反撃に出てみる事にした。



「あの、雲雀さんは…お付き合いした経験とか…」
「又は、その…今現在、恋人がいらっしゃるのですか?」


勇気を出して反撃してみた私の質問は…



「さぁ。…どうだろうね。」


とニヒルな笑顔でアッサリかわされた…。







…何だか…狡いよね。
私には正直に答えろというくせに…自分は、はぐらかすなんて。

でも…更に同じ質問をするのは止めておく。
何度も同じ事を言わせられるのは、嫌な人だと解っているしね。






それに…ま、きっと…その内に解るだろう。
何しろ3か月間も一緒にいるのだし…
恋人がいるならお互いに連絡の1つや2つはするだろう。

ちょっとだけ悔しい気持ちを持って、そんな事を考えていると…




「あぁ、それから…今回の欧州行きでは『偽名』は使わない事にした。」



「はい。」



「本名で行動するとリスクもあるが…プラスになる事もあるしね。」



「…?…」




リスクは容易に解るけれど…
プラスになる面って、例えばどんな事だろう?
でも、それ以上の説明はないし…良く解らないままだけど…
雲雀さんが、そう言うなら…そうなんだろう。












「で、早速だけど…呼び方を変えてくれるかい?」



「…呼び方、ですか?」



「そう。苗字ではなく名前で呼びなよ。」



「…えっ…」




つまり『雲雀さん』と呼ぶな…という事?
確かに恋人ならば…
名前で呼ぶのが普通かもしれないけれど…。





「僕の名前は知ってるだろう?」



「…はい、勿論…存じております。」




ボンゴレの人間で
『雲雀恭弥』の名を知らない者等いない
…当然、私も知っている。

けれど…雲雀さん相手に名前で呼ぶのは、
少々ハードルが高い…。

……が、“出来ません”とも言えない。







「じゃあ、呼んでみて。」



…うっ…更に追い込みが来た。
ホント、容赦のない人だ。

チラリと雲雀さんの方を見ると…
あの綺麗で鋭い瞳がじっと見ている。

う〜ん…正直、気恥ずかしい…。







いや、でも…これは仕事の一環なのだ。
仕事の為に必要な事なのだ。

ここは早速、女優になり…恋人に…婚約者に…
なり切らないとダメよね。


…さぁ、覚悟を決めて…頑張れ自分っ!

心の中で、そうやって喝!を入れ…一度深呼吸をし
…何とか声を絞り出す。





「…あの、では…恭弥さん、で良いですか?」



「呼び捨てで構わないよ。」



「いえっ。雲雀さん相手に、呼び捨てなんて出来ません。」



「…早速、間違えている。」



ムッとした顔で指摘され…慌てて言い直す。








「…あ、ええと…。恭弥さん相手に呼び捨てなんて…出来ません。」



「そう。なら…それでも良いよ。」




よ、良かった…
『恭弥』と呼び捨てにするのは更にハードルが高い。

妥協して貰えて…助かった。
と、心の中でホッとする。











やれやれ…と思っていると…




「今後、君の事は…優衣、と呼ぶよ。」





(…っ!!…)



低音の綺麗な声で、突然自分の名を呼ばれ…
ドキッとする。




「…あ、…はい…。」



「今…この瞬間から、僕達は恋人であり婚約者だ。」
「お互いの呼び方も設定も…全ての工程が無事に済み…」
「日本に帰国し空港を出る、その時までは、決して態度を変えない事…良いね?」



「はい。」







「国外で何があろうとも、今の設定に変更はない。」
「例え、事情を知っているボンゴレの者達に逢おうとも…僕達は恋人であると、貫き通す事。」



「はい、解りました。」



「それから…僕と2人きりの時や、哲も含めた3人だけの時であっても…」
「基本的に、態度を変える事はあまりない。」



「…はい。」








そこまで話した所で、
運転中の草壁さんが話し掛けて来た。



「私からも、今より…」
「恭さんの恋人であり、何れ雲雀家に嫁ぐ方として接しますので。」



「…はい…解りました。」











欧州にいる間は…
どんな場面であっても徹底して、設定を維持するという事らしい。

油断して、二人しかいないから良いと思って態度を変えたりしていると
きっとボロが出る事があるだろうし…
日本に帰国するその時まで、
徹底して演技した方が良いのは頷ける。

雲雀さんは兎も角…私は、そんなに器用な方ではないし…
きっとその方が良いだろうと思う。




あ、そう言えば…
こうやって心の中で思う時も『雲雀さん』じゃなくて
『恭弥さん』と考えた方が良いかもしれないな。


普段から完璧にしておかないと…ね。






…急な事で、暫くはぎこちなくなりそうだけど…
自分の事を名女優だとでも思って頑張ろう!

空港に向かう車の中で…
少々の不安を心の片隅で感じつつも…
取り敢えず、前向き思考で自分を必死に鼓舞した。












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