Marco×Ace 7 マルコは、自分の手を掴んだエースに目を向ける。 いつも、エースは辛そうな顔をして寝ていることが多い。 そんなエースをマルコは気にかけていた。 しかし、今のエースは、とても幸せそうに見えた。 マルコはほっと息をつく。 一時はどうなることかと思ったが、ラッキーなことに、戻った船にはクルーが何人かいて、補助をしてくれた。 今は、医務室のベッドに寝かせているが、もう少ししたら自分のベッドに移そうと考えている。 目の前で眠るエースの頭に軽く己の手をのせる。 そのまま、優しく、割れ物を扱うのかのように彼の頭を撫でる。 まるで、そこにエースがいることを確認するかのように、何度も、何度も。 ふわ、とエースが微笑んだ。 いつもなら、見せないような、安心しきった笑み。 周りにいた者たちも、エースが優しげに微笑んだのをみて、騒がしかったのが一気に静まる。 ーー無事でよかったよい 心の中で話しかける。 そうして、野次のように群がって騒いでいたクルーを追い払う。 今は、エースと二人きりになりたかった。 頭を撫でる手をずらせば、寂しいのか、軽く握りしめてくる。 それが可愛くて、触れるだけのキスをする。 唇を離せば、また、自分の手を握りしめてくるエースの頭に手を乗せてゆっくりと撫でる。 少し癖のあるふわふわした黒い髪の毛が手に心地よい。 普段、潮風に晒されているというのに、エースの髪は柔らかく、艶やかだ。 マルコは普段見せないような微笑みを顔に浮かべてポツリと呟く。 「ゆっくり休めよい」 その言葉が聞こえたのか、エースはまた、ふわりと微笑む。 エースの意識が完全に落ちたのを見て、マルコは深く息を吸う。 おそらく、あと数時間は起きないだろう。 今はゆっくり休んでほしいと思う。 そして、目が覚めて、身体が回復したら、もう一度あの土産物屋に二人で行きたいと思った。 バジルには色々世話になった礼もしたかったし、なにより、エースの目的を果たしてあげたかった。 元はと言えば、マルコが悪気はないとはいえ、否定してしまったのが悪い。 エースがこのようなことになってしまった原因の一端は自分にあるのだ。 マルコは、責任を感じていた。 だからこそ、無事だったとは言えないが、見つかって、ここでこうして自分のそばにいてくれることがマルコにとって何よりも安心できた。 ーー悪かったな 心の中でつぶやく。 バジルの言葉をそっくり借りるのなら、エースは寂しかったらしいのだ。 これはエースを心配して見舞ってくれたサッチに聞いたことだが、マルコが外部調査に出かける度、エースは酒を飲んでは潰れているらしい。 そして、今回も例に漏れず潰れていたエースを見かねてサッチがペアルックのことを教えたらしい。 サッチもまた、エースが寂しがっていることを見抜いていた一人であったと言うことだ。 むしろ、気づかなかったのは、マルコだけだった。 いや、気づこうとしなかったのかもしれない。 商売柄といえど、一回あっただけのバジルにさえ分かったことだ。 マルコに分からないはずがなかった。 それでも気づかないふりをしていたのは、気づいてしまったら、エースの元を離れられなくなってしまう気がしたから。 自由を求めて海を旅するエースに自分の想いを足枷にしたくなかった。 想いを受け入れてもらえただけでも嬉しかった。 それだけに、その強すぎる想いでエースを失うのが怖かった。 だから、気づかないふりをした。 しかし、結果として、エースを傷つけ、このようなことになってしまったのは、マルコの失態だ。 悔やんでも悔やみきれない。 しかし、そんなことを言っても、今は何もできはしない。 今はエースが目覚めるまで、側で見守っているばかりだ。 back/next [戻る] |