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Marco×Ace
3
なぜか緊張してしまって、普段ならしないようなノックをすると、あいているよい、と中から声がしたので、小さくドアノブを回して中に入る。
それから見て!と言おうとして、ぴしり、と固まった。
「あぁ、エース、着せてもらったみたいだねい」
「あ、おう…あの、マルコ、それ…」
なんと言っていいかわからずぽかんとしているエースをちらりと見てマルコがふ、と笑う。
「まぁ、たまにはねい。せっかくだしな」
そう言ってマルコはいつもの眠たそうな目でこちらを見ながら口元に笑みを浮かべた。
ボボボッと顔に熱が集中する。
赤くなったエースを見て、そんなに珍しいかよい?とズレた反応を示すマルコにぶんぶんと首を振る。
マルコが着ていたのは、紺色の生地にストライプの柄の入った、落ち着いた色の浴衣だった。
まさかマルコも着ているとはおもわず、あまりの似合いさにエースの心臓は大きく音を立てた。
エース?と声をかけられて、慌てて扉の前に立っているマルコの側に行く。
「な、なぁ、マルコ?なんで浴衣なんて…」
「嫌だったかよい?」
質問に質問で返されたが、嫌ではなく、むしろ、マルコの浴衣姿を見れて心臓がバクバクしているエースは大きく首を横に振る。
「なら良かったよい」
エースの反応を見て楽しんでいるマルコは、ふ、と笑うと小さく顎をしゃくる。
あたりは太陽が沈み、暗くなってきていた。
「行くぞ、エース。時間がないよい」
そう言うと、顔を赤くしているエースを引っ張って船から降りる。
しばらくすると、お祭り特有のどんちゃん騒ぎがあちらこちらから聞こえてきた。
「マルコ、これって…」
ちらちらと繋がれたままの手を気にしながらエースが期待を込めた目で見つめてくる。
その期待に応えるように頷いて、祭りだよい、と告げた。
「マジか!」
パァッと一気に目を煌めかせたエースを見て、仕事を終わらせた甲斐があったと思う。
早く行こうぜ!と最早繋がれた手を気にすることもなく、ぐいぐいと引っ張ってくる様は本当に愛らしいと思ってしまう。
「落ち着け、エース。祭りは逃げねェよい」
口調は呆れているようだが、内心ではそんな事など微塵も思っていないマルコに、エースは嬉しくなった。
昨日言われたことを思い出す。
(夜あけとけって…こういうことかぁ…)
忙しいだろうが、それでもエースのために時間を開けてくれたマルコが心の底から愛おしいと感じてしまう。
(おっさんなのになぁ…)
ニヤニヤと緩む口元を押さえもせずにエースは後ろから引っ張られてついてくるマルコに太陽のような笑顔で叫ぶ。
「マルコ、大好きだッ!」
「な、何言ってんだよい…っ」
突然言われたエースの言葉に、マルコは思わず赤くなる。
その様子を見てあはは、と楽しそうに笑ったエースは、しかし、次の瞬間にはあちらこちらに並び、いい匂いをさせている屋台に釘付けになった。
「うわっ、すげェ!これ全部食いもんか!?…あっ、あれ食いてェ!」
そう言うが早いか、ダッシュで列に並ぶとうきうきと目を光らせる。
おそらく頭の中では次はどこに行くのか考えているのだろう。
こうなることは分かっていたので、マルコはエースに遅れながら側に行く。
「どうせ、金持ってないんだろい?」
と聞けば、やべっ、と呟いて、ちらり、とマルコを盗み見る。
見上げられたマルコは、これ見よがしにため息をついてから癖のある黒髪をグリグリと撫でて金を渡す。
「ここで暴れられてもこっちが危なくなるだけだからねい。…今回は特別だよい。」
どこまでもエースに甘いマルコはそれだけ言うと、少し離れた人混みの少ない場所に歩いていく。
その後ろ姿を見て、エースは暖かな気分になる。
今回だけ、といいながら何度となく自分を甘やかしてくれるマルコがエースは好きだった。
人の少ないところに行って落ち着いたのか、少し乱れた胸元を直すマルコをみて、エースは、今日はたくさん甘えてやる、と心の中で決心した。


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あきゅろす。
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