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Marco×Ace
2
船番の二番隊隊員達の輪の中に戻ってもエースはどこか上の空でいた。
今回はマルコとは回れないだろうと思っていたが、そこに降って湧いたマルコとの上陸。
何をしに部屋から出てきたのかはわからないが、おそらく食堂に行こうとしているあたり、コーヒーか何かをもらいに行こうと思っていたのだろう。
そんなことを考えながら、エースの頭は別のことで一杯だった。
(…明日の夜ってなんだよ?なんかあんのか?…ていうか仕事は?忙しいんじゃないのか?)
ぐるぐると疑問が頭の中を回る。
しかし、マルコと回れる、と浮かれている頭では疑問こそ出るが、答えにたどり着くことはなかった。
ふいに、名前を呼ばれて我にかえる。
「エース隊長!どうしたんですか?」
ぼんやりとしてしまったエースを心配して声をかけてくれた隊員に悪い、とエースは言った。
「ちょっと考え事しててさ。話聞いてなかった。…で、なんだ?」
謝って、自分から聞き返したにもかかわらず、相変わらず心ここに在らずの自隊の隊長の姿を見て、当分は使い物にならないな、と悟った隊員は、小さく息を吐いて告げる。
「いえ、何でもないです。…それより、エース隊長大丈夫ですか?さっきからずっと上の空ですけど…」
賢い隊員は、しかし、賢いが故に、おそらく今、エースの中で一番の関心を集めているところに触れてしまった。
や、あの、と焦るエースを見て、あぁ、と納得する。
やはり、一番隊隊長である、マルコとの事なのだろう。
喧嘩をしているのか、とも思ったが、目の前で顔を赤くしたり、かと思えば、慌てふためいたり、と忙しいエースを見て、喧嘩ではないと察する。
…いいですね。
大切な人がいて、自分も大切にされていることに少し羨ましくも感じるが、そんなことはおくびにも出さず、その隊員は言った。
「ここは俺たちだけで大丈夫なので、エース隊長は部屋に戻ってゆっくりしててください。」
「えっあ、そうか? じゃあ任せるな。」
隊員の言葉を待たずにそそくさとその場を立つと、エースは自分用に与えられている部屋に向かって行く。
その後ろ姿はるんるんと今にもスキップをし出しそうな勢いで、見送った隊員は、今回の船番はエース抜きでやることになるだろうと思った。


「わっ、何だよマルコ!?」
人の少ないモビーにエースの声が響く。
マルコは、静かにしろい、と言いながらエースを引きずっていく。
大量にあった仕事がひと段落した時には、すでに午後を大きく回っていた。
マルコは急いで準備をすると、隣の部屋にいるエースと用意していたものを持ってイゾウの部屋に行く。
小さくノックをして、入るよい、と告げると、中から了承の声がしたので、片手で開けて部屋に入る。
部屋の主はいつもの着物に身を包んで優雅にキセルを燻らしながら、部屋の真ん中に陣取っていた。
マルコの姿を認めると、少し驚いたように目を見張る。
しかし、頼むよい、と言われるのと同時に投げられたものを見て一目で納得したイゾウは、小さく頷くとニヤリ、と口元に笑みを浮かばせる。
それを見たマルコは、引きずってきたエースと一緒にそれを置き去りにすると元来た道を戻っていった。
マルコが渡したのは、オレンジ色を基調とした、袖に炎のような模様が縫われている一着の浴衣だった。
訳もわからずぽかんとしているエースに、持っていたキセルを置くと綺麗に畳まれている浴衣を解いて、手渡す。
「ほら、エース、ズボン脱いでこれ羽織れ。」
「あ、お、おう。」
さっさとしろ、と言われて言われた通りに着ながらエースは問う。
「なぁイゾウ、なんだこれ?イゾウが着てるのと同じか?」
好奇心旺盛な青年は、初めて着るそれに少し不思議そうにしている。
何にも説明してねェのか、と心の中でマルコに文句を言いながら可愛い末っ子にも分かるように簡単に答えてやる。
「あぁ。そいつぁ、浴衣っていうんだ。祭りがあったりするとよく着たりするんだがな。」
そういうと、イゾウは手際よく着つけていく。
ぎゅ、と帯を締められると苦しくて、思わず小さく唸ると、我慢しろ、と言われた。
しばらく、イゾウが帯を締め、襟を整える音が静かな室内に響く。
暫くして、体を弄っていた手が離れると、
「できたぞ。」
ぽん、と背中を軽く叩かれて等身大ほどの姿見の前に立たされる。
成されるがままになっていたエースは、自分の姿を見て嬉しそうに声をあげた。
綺麗に着付けられた自分の姿に気分が上がる。
その姿を見ると、イゾウはしっし、と出ていくように手を振る。あまり長居させてマルコに後から何か言われるなど、冗談じゃない。
追い払われたエースは、一言お礼を言うと、マルコを探した。
なんで着せられたのかはわからないが、マルコに見てもらいたくてうきうきする。
どこだろう、と探していると、通りかかった隊員が、マルコ隊長なら部屋に入っていくの見ましたよ、と教えてくれたので、ありがとう!と言うと、一目散にマルコの部屋まで走っていく。


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あきゅろす。
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