トラヴァント王国の進撃
飄逸の将は美貌の王を恐れる(2)
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ウォードの言葉を聞いたアスキルは爽やかな微笑を浮かべた。
「圧倒的な力の差を見せつければ、すっぱり諦められるだろ?
僕は無益な争いが嫌いなのさ」
王が笑うと、翡翠色の瞳に金色の長い睫毛がかかり、形のよい薔薇色の唇から白い歯がこぼれる。
まるで天使のような微笑だ。実際、その美しい容貌に惹かれて彼に懸想する者も少なくない。
しかし、その眩しい笑顔の裏にある王の本性をウォードは知っていた。
(寒さの厳しい晩秋に敵の退路を完全に絶ったうえで水攻めを仕掛ける男が、「争いが嫌い」とは……よく言う)
そんな部下の胸中などつゆ知らず、アスキルはウォードに言う。
「今回の戦いでは君もいい働きをしてくれたね。今夜にでも僕の閨に呼んであげようか?」
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