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その他の夢へ…
満ち足りた悪夢より必要としたセカイ(中編)−小泉夢その3。↓続きです


「今回の閉鎖空間の原因は、おそらく貴方です」

小泉くんのその言葉の意味を理解するまでに
私が要した時間はおよそ120秒だった。


…閉鎖空間を作り出したのが私?

どうして私が……?





いつもはハルヒが作り出す創造の産物は、彼女が
不満を抱いたときに発生する確率が極めて高い。


ということは…
私にも、不満があるということ?


自分のことなのにわからない…何だか
…………怖い。


「大丈夫ですか?」
「え?」

「震えていますよ」
「あ…」

不安を表して揺れる体。
小泉くんは私をみて場所を変えましょうと苦笑して

SOS団がよく利用している喫茶店へ私を連れて行ってくれた。

連れて行く、といってもただ並んで歩いただけではあるけど…

そっと手を繋いでくれたおかげで震えは止まってた。
(後で考えると気恥ずかしくてその状況で
知り合いと鉢合わせせずに済んでほっとしてる)






喫茶店に入った私はさっそく話を聞こうとしたけれど
心を落ち着かせる方がいいと勧められお茶をすることにした。


窓の外をぼんやり眺めながら注文したものが届くまで
とりとめのないことを彼と話す。


「お待たせ致しました〜」
暫くして店員さんの明るい声にはっとして振り返ると

「?」

不思議そうな顔をさせてしまったのですみませんと
謝り置かれた紅茶を引き寄せた。

ホットの紅茶で体は温まるけれど話を
聞かないことには落ち着きを取り戻せそうにない。


そわそわしていると小泉くんはまた笑って
そろそろお話ししましょうと言ってくれた。


ドクドク心臓が早まっていくのを知らないフリして深呼吸。
彼の言葉を待つ。



「原因は貴方ですといいましたが、はっきりそうだという確証はありません」

「そうなの?…でも私の可能性が高いって」
「はい。朝比奈さんとも貴方と話す前に相談したのですが」

ああ、それで部屋を出るとき彼女と目配せしてたのか。


「今回は以前発生したどの閉鎖空間より閉鎖度が高いんです」

「へ…?閉鎖度?」
「はい。何重にも閉鎖空間の「層」が張られています。
超能力者である僕でも中心部にまで侵入できませんでした」

「そ、そうなの…?」
「これは明らかに今まで発現したことのないタイプのものです。ですから」

「ハルヒではない誰か、の可能性が高い?」

「はい。そしてその人物は警戒心が強く、中心部にある「何か」を
守っている、もしくは誰かにみられたくないのではないかと僕個人としては考えています。」


なるほど…

「…私は何かを守るために閉鎖空間を作りだしそして
誰かの侵入を阻止すべく閉鎖空間を何層にも発動した…?」

「あくまで僕個人の意見ですけどね。」

小泉君はティーカップを口許に運ぶ。


…私って警戒心強かったんだ。あ、そこじゃない大事なのは。
私は誰から何を守ろうとしてるんだろう。

「そして…誰の侵入を拒んでいるのかの予想はつきます」
「えっ…誰?」
「僕です」

………はい?
僕?

「私が小泉くんを拒否してるってこと?」
「はい。凄く残念なことです。」

「ちっ違うんじゃないかなぁ!」
私は思い切りその考えを否定する。


だって私は彼のことを−

(好きなんだから)






「そこで貴方にお願いがあるのです」
「お願い?」


「はい、僕と共に閉鎖空間の中へ入って頂けませんか?」

「……」
私が作ったであろう閉鎖空間。
本人が進入することによって何か変わるのだろうか。


「ちなみに、なんだけど」
「なんでしょう?」

「そのまま閉鎖空間を放っておいたらどうなるの?」


「閉鎖空間は既に発生しています。そして徐々にではありますが
今までと同様に空間範囲を拡大してます」


「世界が逆転してしまうってことですか」
「ええ」


頭を抱えた。ああ、憂鬱だ。
氷之咲 紫騎の憂鬱。←


何で私そんなの作っちゃうかなぁ…

はっ!


「凄く今更かもしれないんだけどもう1ついい?」
「ええ、どうぞ」

「ハルヒにはみくるちゃんと長門さんが監視役として
ついてて彼女を観察してるんだよね?」

「ええ、僕もです」

「そうそう…で、……今思ったんだけど…
私の監視役もいるの?」


「僕ですね」



「え?」

「僕です」



っえええぇえ〜!!!!


「…やだ」

「はい?今何か言いましたか?」
「いえ……何でもないです…」

観察されてたんだ私!?なんかやだ!


(はっ…じゃあ今まで散歩についてきてたのも
登下校帰ろうって誘ってくれたのも…その、為?)

私を観察するのが目的だった?

(そうなの、かな…本当は…)
私なんかより、側についててあげたい他の人がいる?

(…)


「どうかしましたか?」
「…ううん、なんでもないよ」

ないよ、と言うと同時に笑顔を作ってみたけれど
上手くはいかなかったと思う。

そうですかと答えた彼が寂しそうな顔をしていたから。









「さて、到着しました」

小泉くんの超能力でもう何度も見た閉鎖空間に侵入した。

入ってすぐ感じる違和感。

ハルヒが発動したものではない為か今までの
空間よりも異質を感じる。


これが私が発動させた閉鎖空間…。


なんとも言えない、という言葉がこれほどぴったり
嵌る日が来るとは思ってもみなかった。

複雑な心境だ。



「おかしいですね」
「どうしたの?」

「今日の朝来たときよりも規模が大きい」

「……進行速度が上がったってこと?」
「ええ、それも尋常ではないほどに、ね。何か心当たりはありますか?」


「……うーん……ごめんなさい、思い当たることは何もないです」
「そうですか…では中心部近くまで進んでみましょう」

その言葉に戸惑いを感じつつ頷いた私。

彼の後に続いておそるおそる水色の層−バリア内へ足を踏み入れた。
(小泉くんも私も人間の姿のままで中に入ったので
球体にはなっていない)



「…あれ?少し暖かい?」
「そうですね、ここは春とほぼ同じ気温と湿度を保っています」

「変な感じ」

「朝は気温も何も感じませんでしたから、おそらく貴方が
望んだのでしょう。内部に入る際何か考えませんでしたか?」

「ええと…外寒いけど中はあったかいんだろうな、
というか暖かければいいな、と…あ」
「そういうことです」

す、すごいな。ここだったら願い事が何でも叶っちゃうかも。


(お金空から降ってこーい!!)


シーン


「?どうしました?」

気合を入れて祈る私をみた小泉くんが小首を傾げる。


「えっと…ここなら何か願ったら叶うんじゃないかと」
「どんな願い事を?」
「うっ…」

その質問にはノーコメントで通したい。

お金降れと思ってましたなんて申告、恥ずかしい上
がめつい女だと思われることうけあいだ。

「叶いそうにないこと、です…」

というわけで私はごまかした!


「なるほど」

小泉くんにバレた!?



「おそらく不可能だと本人が自覚しているので
現実にはならないのでしょう」

「!そっか…ハルヒの理性に左右されている世界と同じ原理っぽいね」

「おそらく。…やはり貴方と涼宮さんは似ていますね。
非常に興味深いです」
「そ、うかな…」

興味深い、か。…普通ならなんでもない言葉なのに
小泉くんに言われてしまうとチクッってする…


「さて、ここが中心部付近です」

「何も変わらない気がするけど…」

辺りを見渡した私は足を踏み入れた際の風景と
現在の風景を比べてみた。


微かな違いはあるかもしれないけれど、特に変わった点はないように思う。


「氷之咲さん」
「はい」

「この奥は、僕でも侵入できません。しかし
貴方なら可能かもしれません。」


「…うん、入ってみ」

「しかし安全だという保障はないんです」
「……そっか」


「入りますか?」
「…うん。入らなきゃ何も解決しそうにないし」


彼をこれ以上困らせたくない。私のせいで、今彼は
誰かとの特別な時間を削っているかもしれないのだ。

だから−


「!」「え?」

地面が揺れた。



がすぐに治まる。



「地震?どうして…」
「……閉鎖空間が更に異様なスピードで広がっている…?」
「えっなんで…?(あ)」


もしかして、…………私の今の心に反応したの?

「……小泉くん」
「はい」
「私、行ってくる」
「……はい。どうか気をつけて」


「うん、ありがとう。ごめんね?」
「え?」

「行って来ます!」


彼を振り返らず早足で中心部へと足を踏み入れる。
…問題なく中に入ることができた。


(…早くして早く帰ろう)



このあと私はとんでも体験をすることに!なるのだけど
それはまた次の機会に話そうと思います。


私って…苦労星の元に生まれたのかもしれない…。


またまた続く。


100811


**********************

【ちょっと一言】

UP遅くなってすみません><最近駄目駄目な黒澤です。

最後にこの話をUPしようと書いていた日付が

100703

…1ヶ月以上前からほぼ完成していたにも関わらず
なんか納得できなくて更新してませんでした!

申し訳御座いません!

というわけでUPしました〜どうでしたか?
結局微妙な出来ですが…まあ後編は

面 白 く な り ま す の で期待下さい!
(自分にプレッシャーかけてる!?)


では…もう12時で日付が11日になるのでこの辺で…
おやすみなさーい。

黒澤涼子




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