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ハニーキャット
17
意識がふわふわする。
空を飛んでいる気分とは言葉の通りに宙を浮いていものだから、これは夢だとすぐに理解した。

ふわふわと浮かびながら見渡すと大きく立派な塔を覆い隠すかのように無数の蕀が巻つき、周囲はバラの花に囲まれていた。

まるで黒猫の王子様に出てくる塔みたいだ。

そう意識した瞬間光景が変わる。
今度はベッドとイスしかない無機質な小さな部屋。

ここは確か…そうお姫様が囚われてる塔の最上階の部屋だ。

それなら、と辺りを見渡すと唯一ある小さな窓から外をもの悲しげに見つめる真っ白な猫のお姫様の姿があった。
やっぱり居たと思い近づいてみる。


『あぁ…なんと、なんと』


ボクが近づくと彼女は徐に口を開き悲しみの声をあげた。
それに対してボクは思わず「…どうしたの?」と声をかける。
すると…


『愛しき人と離れ離れになってわたくしは悲しい』


お姫様はボクの方を振り向き、悲しみを増しながら答えた。

そうか黒猫の王子様と仲良くしていたところを彼を嫌う悪い奴に拐われて離れ離れに…。


「そんなに大好きなんだ」

『あの方はわたくしにとってずっと待ち焦がれていた方。一時たりとも離れていたくない』


悲しみの色が更に深まったように涙声の彼女。
どうにか悲しみを取り除きたいと思った。
その時、頑丈そうな扉が開かれ現れたのは真っ黒な黒猫の王子。


『姫!』

『ああ、王子っ』


互を呼び合い愛しそうに抱きつき二人を目の前に良かったと思うのと同時に「いいな…」と呟いていた。
そんなボクを見ながら彼女は優しい笑みをこぼしながら口を開く。


『大丈夫よ…貴方にもいるでしょ?ほら』


彼女が指差した方を見ると、そこには優しげな表情を浮かべたハルさんが立っていた。


「え!?あ、ハルさん…?」

「ごめんね」

「えっ!え、あのハルさん!?」


あわあわと慌てふためくボクを他所に々とハルさんの顔が近づき、そして…顔にヌルッとした感触と荒い息に違和感を覚え、うっすらと光が差し込み…


「…って!ムサシ!?」

「ワンッ」


瞼を上げるとおはようと言っているのか大きく鳴くムサシを見てさっきの感触はムサシに顔を舐められたのかと頬を一撫でして起きあがる。

ムサシったら2階にはあがっちゃダメって言ってあるのに…。
それに、せっかくハルさんが夢に出てきて…その、き、キスをしようと……。

夢の内容を思い出し顔が熱くなっていると不意に「蜜樹ー!起きてるー?」とママの声に我にかえる。
頭の中を占めていたハルさんの姿を振り消すように慌てて口を開く。


「ママ起きてるよー」

「じゃあムサシ連れて早く降りてらっしゃーい」


ママのセリフにやっぱりボクの部屋にムサシ差し向けたのはママかとムッとしてしまう。

すぐムサシ使って起こすの止めてほしいな。
ママが忙しいのは分かるけど使えるものは犬でも何でも使うって人なのはどうなのか?

そんな不満をふつふつ沸き上がらせていると再びママの呼ぶ声が聞こえたので、考えるのを止めてムサシを部屋の外に出して制服へと着替え始めた。


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