ハニーキャット
20
授業の終了を知らせるチャイムが鳴ったと同時にボクは紙袋を持って立つ。
すると猫田くんが「いってらっしゃい。気をつけてな」と手を振ってくれたので、ボクも振り返しながら教室を出た。
まずはハルさんにお礼を言って…あ、お礼ならシャツだけじゃなくて何か合わせて返した方がいいのかな。
おかしとか?でも持ってないし…購買!購買で買えばいいよね!
足を購買部のある方に進め歩く…がすぐに立ち止まり再び悩む。
ハルさん甘いもの嫌いだったらどうしよう…。
いやいやお菓子でもしょっぱいものもあるもん両方買えばいいんだ。
あー…でもたくさん持っていっても迷惑だよね?
ん〜ここで悩んでてもしょうがないから購買で考えよ!
駆け足になりながら何てお礼を言おうか、どう渡すかを考えながら意気揚々と廊下を進む。
だが浮かれている最中ふと気づく…
「ところでハルさんのクラスって…どこだろ?」
口にしてから事実に気づきサァーと体温が下がる感覚がした。
そういえばハルさんの学年とかクラスとか全然知らなかった…。
先輩…だよね?
あの時『先輩』て呼ばれてた気がするけど確か7クラスくらいあったハズだから単純に14クラスを訪ねる感じになる訳だし、そこからハルさんって名前だけで探すの?
それって…
「難しくない……?」
***
「あ、蜜樹借り物返せ…たってどうした?」
「猫田くぅん……」
紙袋を抱えてとぼとぼクラスに戻ってきたボクに怪訝な表情を浮かべる猫田くん。
そんな猫田くんにボクは半べそかいた情けない声で説明した。
「学年も知らないって一体どういう付き合いの奴なの?」
「えと、昨日知り合ったばっかりで…」
「昨日!?」
「うん…」
「はぁ〜…蜜樹だから納得してしまいそうでコワイ」
頭抱えながら呟く猫田くんの言葉にどういう意味だろと疑問に思っていると「よし!」と思いついたように手を軽く叩く。
その音に少しビックリしたボクをしり目に思わぬ提案が耳に届く。
「なら、昼休みに俺2年の教室行くけど付いてくる?」
「え?」
「いやさー兄貴が弁当忘れたから昼休み一番に届けようと思ってたんだよ。上級生の階って一人だと妙に行きにくいし次いでにどうかなって」
猫田くんのまさかの提案に迷わず首をタテに振る。
すると猫田くんは安心したような笑顔になり「やった」と声を弾ませていた。
うぅ…数十分前に猫田くんに頼らないようにって思ったばかりで情けないけど、ハルさんに会えないのはイヤだし頼るしかない。
ホントにボクってダメだなぁ…。
自分の不甲斐なさに落ち込みながら猫田くんにありがとうと言うと「いいってことよ!」と笑顔で言われ、頭を軽くポンポンと撫でられた。
「…それにちょっと厄介な人達から逃げる口実にもなるし」
「え?なに?」
小さく聞こえた猫田くんの声に反応して聞き返せば「いや、こっちの話し!」と遮られた。
なんだか誤魔化されたような?
疑問に思いつつも次の授業開始のチャイムが鳴る。
それに合わせ疑問も薄れていき自分の席に戻る頃には、まぁいいかと思う。
こうしてお昼休みに猫田くんと2年生のクラスに向かうことになったのだった。
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