ハニーキャット
19
パパとママへの暗い気持ちと共に足取り重く学校に着いた。
ボクの気持ちとは裏腹に賑やかな教室に一呼吸してから入る。
すると猫田くんが「おはよう」と何気ない笑顔を向けてくれ、ボクも猫田くんの元気さにつられて自然と笑顔でおはようと返しながら席に向った。
「あれ、その紙袋なに?」
机の横にカバンをかけると猫田くんが不思議そうに訊ねてきた。
その事に今朝の出来事が頭を過る。
本当のことは言えないけど嘘つくのも……。
なんだかハルさんのことで罪悪感を覚えてるのもイヤだな。
苦い気持ちをグッと抑えながら何でもないように答える。
「これは…えと借り物で返そうと思って持ってきたの」
当たり障りのないように気を付けながら言うと猫田くんは驚いたように数回瞬きをした。
あれ…?ボク変なこと言っちゃった!?
猫田くんの反応に焦り困惑していると…
「…物の貸し借り出来る奴ができたんだな!」
「え?」
嬉しそうに言う猫田くんがよく分からなくてボクは首をかしげる。
そんなボクを見て慌てた様子ですぐに訂正の言葉を口にする猫田くん。
「あ、いや…嫌味とかじゃなくて!その蜜樹なんか俺が居ない時は一人でぽやーんとしてことが多いじゃん」
「そう…かな?」
そうだよ!と食いぎみに言われて少し考えてみる。
うーん…確かに入学してから猫田くんと以外のクラスの人とあんまり話したことないかも。
なんか遠巻き?っていうのかな…見られてる気はするんだけど。
何かあるのかな?て話しかけても目をそらされながら話すから話しかけてほしくないのかなとは思ってたけど。
入学当初からの記憶をたどると確かに言われた通りかもしれないと納得していると続いて猫田くんの声が耳に届く。
「だから周りにまだとけ込めてないのかなって思ってたから…なんつーの?親心みたいな?」
安心したような緩んだ笑顔を向けられながら言われ、そんな心配されていたことに驚きと気恥ずかしさを感じた。
昨日もだけど猫田くんはボクのことよく見ててくれるし親切にしてくれる…すごいなぁ。
ボクは感心と同時に猫田くんへの感謝の気持ちが大きくなった。
「同じ歳なのに親心って…でもありがとう 」
「うわー!そんなんいいから!つか忘れてくれっ」
猫田くんが顔を赤くしながら手を振っている姿が新鮮で思わず笑ってしまう。
そんな話をしている間にチャイムが鳴り、授業が始まる。
猫田くんにはいつも助けられてるし心配までしてくれてて…これからは猫田くんに心配かけたり頼ってばかりじゃダメだよね。
昨日だってハルさんにも心配されてたししっかりしないと!
まずは休み時間になったらハルさんにシャツを返しに行って、ちゃんとお礼言ってボクのイメージ挽回しなきゃ。
決心と嬉々とした気持ちで授業をうけているこの時のボクはある問題に気づくことなんて出来やしなかったのだ。
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