ハニーキャット
12
掴んだ手を離すタイミングを逃し、沈黙につつまれる。
ど…どうしようか。パッと手を開き引っ込めればいいだけの話なんだけど。
それをする気になれない。
むしろ離したくないとまで思ってる。
どうしたものかと考えていると…
「あの、さ…」
「っ!?」
「あ、ごめっ…」
突然、声をかけられて驚いて顔を上げると申し訳なさそうな表情が目に飛び込んできて咄嗟に首を横に振った。
そうすると和らいだ表情になる。
やっぱり落ち着く。この人といると。
「えー…と、襲われたのは今回が初めて?」
そう考えている矢先に言われた言葉に再び固まってしまう。
あ…襲わ……ボク襲われたんだ。
ただの確認で深い意味はないのかも知れない。でも襲われたと言葉でハッキリと現されるとあの光景を思い出してしまいそうになる。
と…とにかく答えなきゃ。
と、動揺しながら首を縦に振った。
「え…あ、初めてだったんだ…」
ボクの行動に目を瞬かせながら意外と言いたげな様子だった。
何だろうボクってよく襲われているようなやつに見えるのかな。
嫌だな。そんな風に思われるのって…。
そういえば猫田くんにも心配されてたし、ボクってそういう危ういイメージがあるのかな。
…違うのに今回が初めてだったし、それにいつもはこんな危なそうな人にもついて行かない。
そんな風に印象づけられることに対して不服を感じ、言葉には出さないで心の中で弁解しながら少し強めに頷く。
すると…
「…1年?」
少し考えるような素振りをして唐突に問われた。
1年…?ってもしかして1年生ってこと?
疑問に思いながら、そう解釈してコクンと頷いた瞬間…
「じゃあ、怖かったよな…」
憐れむような表情が目に映った後に頭に感触を感じる。
予想もしてない出来事に頭が真っ白になった。だから頭を撫でられているんだと気づくのに間が出来てしまった。
あ、頭に…手が。
その事態にボッと顔が熱くなり体を硬直させる。
しかし優しく優しく流れるように頭を撫でられ、体の緊張が解されていく。
そして撫でらる度に胸の奥の色々な感情が開花し始める。
襲われた恐怖、知らない人といる不安、助けられた安心感、そして優しく微笑まれる度に感じていた好意。
それらが一気にブワッと花開き、感情が溢れる。
溢れる感情を逃がすためか自然と瞳に水が溜まり出す。
次の瞬間…
「怖かったぁ〜ッ」
「っ!?」
瞳と心の中に溜まりきった感情が流れ出し彼の胸に飛びついていた。
きっとすごく驚かせただろう。迷惑だろう。それでも押さえられない。
しゃっくり混じりの声で途切れ途切れに言葉を溢すと毎回「そっか」と優しく相づちをしてくれる。
その度に心に安心感や好きという感情の花が開く。
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